野坂昭如氏告別式 五木寛之氏が弔辞
9日に心不全で亡くなった直木賞作家・野坂昭如氏(享年85)の葬儀・告別式が19日、東京・青山葬儀所でしめやかに執り行われ、出版、芸能関係者ら約600人が参列した。
葬儀は野坂さんの生前からの希望を生かし無宗教・戒名なしの形を取り、祭壇には野坂さんの遺骨が置かれた。さらに野坂さんの歌唱楽曲を使用することを発展させ、バイオリニスト・佐藤陽子さん(66)の演奏、邦楽の小鼓、笛の演奏を加え、最後は野坂さんが1973年に結成したラグビークラブ「アドリブ倶楽部」の部歌で締める音楽葬とした。
葬儀は71年に録音した野坂さんの「黒の舟唄」で始まり、葬儀委員長のタレント・永六輔(82)が野坂さんが生前言い続けてきた「二度と飢えてる子どもの顔は見たくない」の言葉で野坂さんをしのび、最後には感極まり、声を詰まらせた。
作家の五木寛之さん(83)が「野坂さんは1960年代の象徴だった。言葉にならない欠落感がある」と弔辞を読み上げ、女優の壇ふみ(61)が作家・瀬戸内寂聴さん(93)の弔辞を代読した。
喪主の暘子夫人(74)は野坂さんとの出会いやプロポーズされた場面を振り返りながら「野坂は生まれて2カ月たらずで母親と離され、母の顔を知りません。目を閉じた野坂の顔は驚くほど美しくしく穏やかで、初めて見た顔です。ちょっとうれしそうな(表情は)…母に抱かれた“昭如少年”だったに違いありません」とあいさつし、場内を感動させた。
◆主な参列者 永六輔、五木寛之、壇ふみ、小山明子、吉行和子、小林亜星、横山剣(順不同、敬称略)