吉田羊 大ブレーク生んだ“運命の男”
栄枯盛衰の激しい芸能界にあって、昨年1年間で最もブレークした女優といえば、吉田羊(年齢非公表)だろう。日本アカデミー賞の優秀助演女優賞など、賞レースは総なめ状態。4日には40代にしてエランドール賞新人賞を獲得し、話題となった。
吉田は90年代後半から、小劇場の舞台女優として活躍。01年には演劇プロデュース集団「東京スウィカ」を旗揚げし、07年まで在籍した。09年には、NHKの連続テレビ小説「瞳」に出演。関係者からの注目が一気に高まった。
たたき上げで実力を蓄え、満を持してブレークした吉田。だがその心中には、ある種の“コンプレックス”が潜んでいた。「私、6年前まで、賞レースに自分が参加できるとは1ミクロンも思っていなくて…。そこを目指す資格のない人間だとどこかで思っていたんです」。小劇場という、ある意味アンダーグラウンドでの日々が、華やかなスポットライトを必要以上にまぶしく感じさせていた。
そんな吉田の転機となったのが、11年2月に行われた日本アカデミー賞の授賞式当日、ある男性との“運命の出会い”だった。「用賀にあるバーで見ていたんですけど、そのとき深津(絵里)さんが『悪人』で主演女優賞を受賞されて、スピーチをされているのを他人事で見てたんです。そしたら、左隣にいた男性のお客さんが、『羊ちゃんはこういうテレビをどういう気持ちで見るの?』って言ったんです」と語った。
驚きと戸惑いの中、「『いや、ふかっちゃんか…、良かったなって思いで見ますよ』って答えたんです」という吉田。すると『そうなんだ…。やっぱり同業者だから悔しいのかなって思ったんだよね…。いつかはここに立ちたいって。意外に素直なんだね」と言葉が返ってきたという。「その瞬間に、不思議と『あ、私もここに行きたいと思っていいんだ』と初めて思って…」と、心の中で、それまでなかった欲が生まれ始めた。
以降は毎日、日々つけている「感謝帳」に「いつか日本アカデミー賞で最優秀助演女優賞を取れますように」と書くようになったという。「自分で意識し始めると、やっぱり欲も出てきて、これまで見ていた日本アカデミー賞の番組も、違う景色に見えたんですね。『今年も私はここにいない。来年は来れるのかしら?』と、“自分事”として見られるようになってこの6年間を過ごしてきたので、意識するっていうのは大事だなって思います」と話した。
助演として大ブレークした吉田。次は主演も…という野望があるかと思いきや、「そうは思わないですね。もちろん、『羊さんを主演で撮りたい』という奇特な方がいらっしゃれば、もちろん挑戦したいとは思いますけど、それで主演女優賞を狙っていこうとは思わないし、あくまで女優としての経験値をふやすという意味で、助演という立ち位置では見られなかった景色がみたいという気持ちですね」とサバサバした笑顔で話した。
その思いを支えるのは、吉田の“職人”としての誇りだ。「主演肌ではないと思ってますし、主演の方を何とかもり立てたい、その人に必要とされたい、役に立ちたいという気持ちで現場にいる方が楽しいんです」。ひょうひょうとした受け答えに定評のある吉田が、笑顔ながら熱っぽく語った。
“演技の鬼”とも思える吉田だが、もちろんプライベートでは普通の女性。結婚願望も持っている。「結婚に関しては、とりあえず1回して。離婚するとしても1回して、できないわけじゃないんだよ、っていうのを示して…」と、ユーモアを交えながら答えた。ちなみに、用賀のバーで出会った“運命の男”とは「本当に名前も顔も覚えてないぐらい…。ただの常連さんです」と、何事もなかったという。次はプライベートを変える“運命の男”と出会うことがあるのか、そして出会った時、吉田羊がどう変わっていくのか…。興味はつきない。(デイリースポーツ・福島大輔)