桂歌丸「笑点」降板発表 「体力の限界」
落語家の桂歌丸(79)が30日、東京・後楽園ホールで行われた日本テレビの人気番組「笑点」の50周年記念スペシャル(5月15日放送)の公開収録に参加。5月22日に行われる生放送をもって、同番組の司会から降板することを発表した。
収録の最後、「私からちょっとお知らせがございます」と切り出した歌丸。客席のみならず、舞台上にも戸惑いの空気が広がる中、「5月22日の生放送をもって、大喜利の司会を最後とさせていただきます。若い方に譲らなければ、番組が続いていかないと思いますので」と、務めて淡々と口にした。
収録後の会見では「体力の限界なんですね。歩くことが大変に苦しいんです。それと、歩くと肺気腫を患ったために息切れがしてしまう。これ以上続けていきますと、今までだってずいぶんスタッフの皆さん、仲間の皆さんにご迷惑をかけましたので、それ以上の迷惑をかけてはいけないと」と理由を説明。「昨年の秋ぐらいに日本テレビさんとお話をさせていただきました。夏場に長い入院をしまして、その時に引き際だなと考えていたんですが、50周年を控えているのでそれまで生きていろと言われて」と、冗談めかしながらこの日を区切りに選んだ理由を語った。
大喜利メンバーには今年の1月に伝え、「発表するまで内緒にしててくれよ、と言いました」という。番組内の一番の思い出としては「ありとあらゆることが思い出でしたが…」としつつ、「先代の円楽さんが少し体調をお悪くされたとき、『歌さん、頼む』と言われた。これは生涯、私の頭から離れません。『頼む』の内容は、笑点だけではないと思ってます。ありとあらゆるものを頼むとおっしゃったんだと思ってます。それが一番の思い出。それで司会を引き受けさせていただいたんですから」と述懐した。
番組を去ることについては「正直言いまして、寂しいですよ。それは寂しいです。50年間しゃかりきになってやって来た番組であり、私もこの『笑点』で名前と顔を全国的に売り出して下さった番組ですので」と穏やかな笑顔。それでも「寂しいですけど、踏ん切りをつけないと席を譲ることはできませんので、踏ん切りをつけました」と、後進への思いも吐露した。
その上で「別に落語家を辞めるワケじゃありません。笑点の司会をやめさせていただきます」とキッパリ。「落語家は続けます。落語の方では負けちゃいられない」と、さらに芸道を究めていく思いを口にした。
番組内での掛け合いは名物となっていた三遊亭円楽(66)は、「(降板を)聞いた時は、ぼう然というのが本当でした」と声を震わせた。「死ぬまでやったらいいと思ったんですよ。迷惑掛けてもあそこ(司会席)で死んだら私がまた突っ込めるし。まずは大きなネタがなくなるという自分の寂しさ…」とジョークを交え、「ウチの師匠もそうでしたが、男の引き際というのはこういうものでした」と話した。
近年は全国で、歌丸との二人会を行っている円楽。「芸の欲があるうちはこの人は大丈夫です。落語で背中見ていきます。笑点通じて時々生きてるかと信号送りますから、生きてるよと返して下さい。もっと勉強しろと叱って下さい」と、最後は涙をこらえきれなかった。
番組が50年間続いた理由を「約束したわけでも話し合ったわけでもございませんが、答えの中で陰惨な事件、暗いニュースには一切触れない。ご家族全員でテレビの前で笑える番組にしようという思いがそれぞれにあって、それで長持ちしたんだと思います」と笑顔で話した歌丸。会見の最後には「終身名誉司会」への就任が発表され、本放送の直前に放送される5分間番組「もう笑点」への出演は続けることも発表された。
歌丸は今月22日、自身が館長を務める横浜市の寄席「にぎわい座」での会見で、「笑点」の降板について「そろそろ考える時期が来ているかなという気がしている」と発言。「具体的には決まっていないけど」と前置きしながら引き際について言及していた。
歌丸は放送50周年を迎える長寿番組に、第1回から出演。06年からは司会を務めている。だが近年は病気で休演することも多く、昨年夏には腸閉塞で2カ月間休養し、8月8日の収録で復帰していた。