藤木直人 蜷川幸雄さん遺作舞台に涙
俳優・藤木直人(43)が24日、さいたま芸術劇場で、肺炎による多臓器不全のため死去した演出家・蜷川幸雄さん(享年80)の遺作にあたる主演舞台「尺には尺を」(25日~6月11日)の稽古を行った。
稽古途中で会見した藤木は、今作が2度目となる蜷川作品出演が遺作となってしまったことに「(病床から)帰ってきてくれると思っていた。その時に良いものを作ろうと、必死に蜷川さんの思いを頑張って形にしようと思っていた…。明日(初日)は見てくれていると思う」と涙ながらに熱演を誓った。
藤木によると、4月22日の出演者の顔合わせに蜷川さんが欠席したことで、翌23日にキャスト全員で病院へ台本をもって見舞った。本来「そこで台本読みをしよう」という話だったが、蜷川さんの体調が悪く、結局は本読みはせずに、1人ずつ寄り添って「頑張ります」と本番への決意を伝えたという。その時「声を出すのも絞り出す感じだった」そうで、それが最後の別れとなった。
この日の稽古では、本来蜷川さんが座る演出家の席に遺影が置かれた。稽古また本番期間中は、楽屋にも遺影が飾られるという。見守られながらの公演となる。「もしいてくれたら、相当、ダメ出しが飛んでくるでしょう。ダメ出し聞きたいような聞きたくないような気持ちです。頑張って作っていくしかない」と静かに意気込んだ。
また、共演の多部未華子(27)は、「まだどこかに、近くにいる感じがしている」と死が信じられない様子。実は、今回の出演は、蜷川さんに「シェイクスピアをやりたい」と直談判し実現したという。「あの時、言ったことでここにいる。(蜷川さんが)いらっしゃらないのは、残念でくやしい。『シェイクスピアを一緒にやろう!』との言葉を胸にやるしかない」と自分に言い聞かせていた。