ルール独特?韓国競馬は内枠有利
6月7日、JRAの歴史に新たな1ページが加わった。JRA所属馬として初めて韓国競馬に遠征したエスメラルディーナ(牝4歳、美浦・斎藤誠厩舎)が、トゥクソムC・韓国G3(ソウル、ダート1400メートル)を制覇。現地で活躍する日本人ジョッキー・藤井勘一郎騎手を背に、好位追走から直線であっさりと後続を突き放す圧巻のレースぶりを見せた。
そこで、今回は新たな試みにチャレンジした斎藤誠師に、意外と知られていない韓国競馬について聞いてみた。驚いたのは韓国独特のルールだ。日本ではスタート直後にポジション争いがあり、逃げ馬が外枠に入った場合は外から内へ斜めに走って位置を取りに行くが、韓国でこれをやると制裁の対象になる。スタートしてから約100メートルまでは真っすぐに走らなければならない。「イメージは陸上競技のセパレートコースですね。このやり方だと枠が重要になります」と師は説明する。
大きな特徴は内枠有利。仮に内枠の先行馬が出遅れたとしても、外から邪魔が入らないため、好位置を確保できる。逆に外枠では好発を決めてもしばらくは真っすぐ走らなければならないため、先手を奪うにしてもロスが生じる。実際にエスメラルディーナも内枠の恩恵はあった。2番枠から発走したものの、テンのダッシュはひと息で置かれ気味に。日本なら外から前に入られるところだったが、邪魔する馬がいなかった分、二の脚の速さですんなりと好位置を確保できた。これは勝因のひとつとして挙げられる。
ダートの質も日本とは違う。3回東京1週目のダートの砂厚は約9センチ。韓国では「砂厚は約6センチと言ってましたね。質感はさらさらとしていました」とトレーナー。「調教の概念も日本とは違いますね。併せ馬というものがないようです。はっきりとは言えないのですが、時計も計測していないようです」。日本とは異なる部分があるようだ。
そんな韓国競馬を肌で感じた斎藤誠師。「競馬に関して真摯(しんし)に取り組む姿が見られましたね。技術面では日本より遅れているかもしれませんが、前に進もうとするエネルギーを感じました。これは見習わないといけないと思います」と素直な感想を述べる。続けて、「今回の遠征は僕にとってもいい勉強になりました。次の機会があれば行きたいですね」と前向きに語った。
日本競馬が韓国競馬より先に進んでいるのは間違いない。しかし、そこから学ぶことは十分にあるように思える。記者として、競馬先進国ばかりに目を奪われがちだが、これからは韓国はもちろんのこと、いろいろな国に視野を広げて勉強したい。(中央競馬担当本紙・小林正明)