服部力斗が判定勝ちでデビュー4戦全勝
「ボクシング・4回戦」(9日、阿倍野区民センター)
2月24日に慢性骨髄性白血病で17歳のプロボクサー・服部海斗さんの兄・力斗(21)=大成=は前田尊明(32)=真正=を判定2-0(39-37、39-38、39-39)で下し、デビュー4戦全勝(1KO)を飾った。
1回、ゴングと同時に突撃してきた相手に面食らった。それでも足を使い、ワンツーをヒット。リズムに乗った2回もスピードで上回りリードを奪った。
3回以降は頭を下げ、パワーで押してくる相手に手を焼いた。被弾しながらも、効果的に右アッパーで出足を止め、逃げ切った。
「負けたと思った」と、勝利コールを聞くと、リングにひざまずき、号泣。「泣かないと思ったけど、カイ(海斗)のことを思い出して、やっぱ泣いてしまった」と安どした。
「頭を下げてくるのは分かってたけど、実際すると戸惑った。カイには『しょうもない試合して』と怒られますね。悔しいけど、勝ったから良かった。前の自分より強くなった。前なら負けていた」と、辛勝にも成長の手応えをつかんだ。
試合会場の阿倍野区民センターは弟の葬儀、告別式が行われた式場に隣接。「絶対にカイも来ていると思った」と弟とともに戦った。実家も近くで弟に手を合わせてから会場に来た。幼少期には兄弟で自転車に乗り、駆け付け、現役時代の丸元大成会長のファイトに声援を送ったことも鮮明に覚えている。思いの詰まった地で勝ち名乗りを天国に届けた。
弟の死。さらにその8日後には母・佳代さん(享年45)も肝臓病で死去した。「どうしていいか分からなかった」と、長兄は打ちひしがれた。だがボクシングしかなかった。
弟が所属した大成ジムに移籍し、6月7日の追悼試合で弟の名を刻んだシューズを履き判定勝利で飾った。
「同じリングに立つ」という弟と交わした約束は果たした。区切りとし、選手を引退することも熟考したが、「兄がベルトを獲れば喜んでくれる」と、終われなかった。7月上旬、大成ジムのある兵庫県三田市に引っ越しした。弟がボクシング1本に打ちこんだ街で今は弟の夢に描いた世界王者を目指す。
移籍3戦目となる次戦は12月。「絶対にカイのことを忘れて欲しくない。自分が勝ち続ければカイのことを思い出してもらえる。背負ってるものが違う」。弟のため、兄は負けない。
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