柿谷詫びる 曜一朗コールに涙止まらず

サポーターの声援を背に涙をぬぐう柿谷
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 「J1、C大阪1‐2川崎」(15日、金鳥ス)

 柿谷は泣いていた。試合後の壮行セレモニーの出番を待つ間も、汗に濡れた顔をタオルにうずめ、肩を震わせていた。

 カクテル光線に照らされた蒸し暑いピッチをゆっくりと歩き、センターサークル付近に立った柿谷は、詰め掛けた1万5873人のサポーターに向けて声を振り絞った。「こんばんは。スイスの‐」と口を開いたが、声にならない。

 恋い焦がれた末に背負った背番号8を、わずか1年半で脱ぐことになった。「正直、すごく悩みました。自分から8番のユニホームを脱ぐことをどうしてもしたくなかった。ただ、W杯を経験して、もっともっと強くならないといけないと思いました」と移籍決断の理由を改めて説明した。

 ようやく自らの言葉で伝えることができた。バーゼルへの完全移籍が発表された先週7日、クラブからのリリースによる発表に「自分の口でサポーターに伝えたかった。もう少し(移籍発表の)方法がなかったのかなと。本当に悔しい」と表情を曇らせていた。

 この日は1‐2の後半38分からピッチに立ち、クラブへの思いを噛みしめるようにホームのピッチを駆けた。わずか7分間の出場。シュート0本に終わり、チームを逆転勝利へ導くことはできなかった。

 家族やチームメートへの感謝を述べた後、柿谷は言葉を詰まらせながら、サポーターとの果たせなかった約束を侘びた。「優勝して出て行くと、あれほど言っていたのに、自分から出て行くことを選んでしまい本当に申し訳ありません。今よりもっともっと強くなって、8番がもっともっと似合う選手になって帰ってきます」。

 約3分間のスピーチを終え、チームメートに胴上げされた柿谷は、背番号と同じ8度宙に舞った。場内を一周し、ゴール裏サポーターからは拡声器を手渡され言葉を求められたが、柿谷は拡声器を使わずに声を張り上げた。「皆さんの誰よりもセレッソを愛してますし、皆さんのこともホンマに愛してます。最高のチームメイトと最高のサポーターに出会えたことは僕にとって誇りです」。ありったけの思いを言葉に込めた。

 降り注ぐ“曜一朗コール”を全身に浴びながら、深々と頭を下げてピッチを後にした。4歳から20年近くを過ごしたかけがえのないクラブに別れを告げた柿谷。涙はいつまでも、止まらなかった。

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