中村勝広氏、甲子園で「お別れの会」

親族を代表して謝辞を述べる長男の中村大輔氏
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 9月に急逝した阪神・中村勝広GMの「お別れの会」が19日、甲子園球場で行われた。長男・大輔氏の主催者代表の謝辞が感動を誘った。

 以下は大輔氏の謝辞全文。

 「3年前、阪神タイガースのゼネラルマネジャーに就任し、特に今年に関しては自分の野球人生の集大成として、阪神で優勝したい。必ず阪神を優勝させたいと強く思い。私たちに口にしておりました。

 そんな戦いのさなか、9月23日、父は志半ば、脳出血にて急逝いたしました。それはまさに突然の出来事であり。私は小さいころから父が優勝を夢見て戦い続けてきたことを知っておりましたので、父がどれだけ悔しかったか、どれだけ無念だったかはかり知ることはできません。そして、ここにおられる野球人の皆さまのご家族も同じであると思いますが、私たちはともに戦い、父を心から応援しておりましたので、2カ月たった今でも悔しさが晴れることはありません。

 父は選手、監督、ゼネラルマネジャーとして優勝を体験することはできませんでした。その意味では野球人として真の勝者とは言えないのかも知れません。しかし、命を賭けて自分の身を削り戦い続けた父を勝者だと私は信じております。そして、そんな父を私は誇りに思います。

 ここまで育ててくださった阪神タイガース球団の皆さま、そしてともに優勝に向かい戦い続けてくださった監督、コーチ、選手、そしてOBの皆さま方、故人に代わりまして、心よりお礼申し上げます。

 また、ずっとそばで支えてくださったご友人の皆さま、野球人としての礎を築いてくださった南部中学、成東高校、早稲田大学の野球部の皆さま、いつも温かく励ましてくださった報道関係の皆さま、そして出身球団でないにもかかわらず監督、ゼネラルマネジャーとして職務を与えてくださったオリックス球団の皆さま、本当にありがとうございました。

 そして、何より阪神タイガースファンの皆さま、本日は平日にもかかわらずご参集いただき誠にありがとうございます。

 生前の父はいつも温かく、熱く応援して下さるファンの皆さまのことを常に感謝しておりました。優勝を目指しながらそれを果たせない父にいくらかのご不満やご批判があったことを本人も私たち家族も承知しております。そのことに申し訳なく思う一方で父は阪神ファンの皆さまを本当に愛し、「阪神ファンのおかげでオレはここまでやってこられた。今年こそ阪神ファンを喜ばせてあげたい」と私たちに話しておりました。

 思い返せば1992年。父が監督をしてあと一歩のところで優勝を逃したその翌日、もう優勝できないことが決まっているにもかかわらずこの甲子園球場を満員の阪神ファンが埋め尽くし、ある一つの横断幕は「中村監督、夢をありがとう」と書かれておりました。私たち家族はその一つの横断幕に救われ、そしてそれに代表する阪神ファンの真の暖かさがあったからこそ、父は優勝という夢を追い続け戦い続けることができたのだと確信しております。ファンの皆さま、本当にありがとうございます。

 その一方で家庭での父は私たちのことを愛し、大きく包み込むとても優しい父でした。最近では2人の孫の成長を、目を細めて喜び、時間を忘れ、一緒に遊んでいた姿が、昨日のように思い浮かびます。父は家で多くのことを語る方ではありませんでしたが、私は父の背中からたくさんのことを学びました。仕事に真摯(しんし)に取り組み、どんな逆境にも立ち向かう父。謙虚な心を持ち、周りのことを大切にし、絆を深める父。家族の絆を大切にし、大きく包み込んでくれる父。私たちの心の支えには強くて優しい父がいました。恥ずかしながらこの年齢になっても私にとって父は1番尊敬する人であり、目標でした。

 そんな父のおかげで私は今、小さいころからの夢であった医師として働いております。そして、今現在、アメリカに住んでおりますので、最後に父と話したのは急逝する1カ月前の一本の電話でした。その電話で野球の話、そして、たわいもない話をしたあと、最後に父は珍しく、いや初めて私に最近、本当に体が疲れるんだよなと弱音を吐きました。そんな父を一人の医師として命を救ってあげられなかったことを今でも悔いております。

 しかし、私たち遺族に今、できることは父の遺志を受け継ぎ、周りの人の心を見つめ続け、大切にしていくことだと思っております。その意味では本日は父の別れの会ではございますが、この父が愛してやまなかった甲子園球場で絆をいただいた、これだけの多くの皆さまが一堂に集まったこの会で、私たちは新たな出会いの場とし、さらなる絆を深めていきたいと思っておりますので、故人の生前と変わらずご指導、ご鞭撻(べんたつ)のほどお願い申し上げます。

 そして、来年以降の阪神タイガースの飛躍。父の悲願であった優勝を心より願っております。本日は誠にありがとうございました」

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