【鳥越規央】岡崎&梅野ツープラトンが理想
今季の阪神は正捕手争いが焦点ですね。12年目にして初めて開幕スタメンを勝ち取った岡崎太一捕手(32)と3年目の梅野隆太郎捕手(24)には、特に注目です。
この2人を今年のオープン戦から開幕3連戦にかけてのデータから、セイバーメトリクスで以下の項目を比較してみましょう。
(1)打力
(2)盗塁阻止率
(3)キャッチング
(4)リード
近年の阪神の捕手の攻撃力は散々たるもので、2014、15年とOPS(※)が0・6を下回るというありさまです。投手が打席に入るので、実質7人で攻撃するようなものでした。
しかし今年は両捕手とも打撃が好調、どちらも主軸級の数字を残しています。特に「オープン戦本塁打0」を回避する一発を放った梅野の長打力は魅力で、OPSも一流レベル。第3戦で好走塁も見せた梅野が攻撃面で軍配です。
阪神の盗塁阻止率は高値安定が売りでしたが、梅野は14年シーズンは・263とそこまで高くなく、今年も6度盗塁を許し、刺殺はまだなし。それに対し岡崎はここまで4割の阻止率をマーク。こちらは岡崎に分がありそう。
キャッチングについては、ボールを後ろに逸らさず『壁』になることができるかで評価してみましょう。落ちる系の変化球を多く要求しているのに後ろに逸らす数が少ない梅野がしっかり『壁』としての役割を果たせているとの評価です。
配球を科学的に評価するのは運の要素が多分に含まれるため難しく、元中日の山本昌広氏が「試合で3割思い通りに投げられたら完封できる」と述懐したほどです。
そこで、打者からどれだけのストライクを取ったかで評価してみると、両捕手ほぼ互角。今後の起用としては、予告先発制度を活用して打撃の相性と、自陣先発投手との相性を鑑みたツープラトンが現時点での理想ではないでしょうか。(統計学者)
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鳥越規央(とりごえ・のりお) 統計学者。大分県中津市出身、46歳。野球統計学(セイバーメトリクス)を駆使した著書は『本当は強い阪神タイガース』(筑摩書房)『スポーツを10倍楽しむ統計学』(化学同人)など多数。所属学会はアメリカ野球学会、日本統計学会など。JAPAN MENSA会員。