中村美里、大本命まさか…初戦で散る
「ロンドン五輪・柔道女子52キロ級・2回戦」(29日、エクセル)
赤とオレンジの畳にすみ着く魔物に、52キロ級の大本命、中村美里までも餌食となった。まさかの初戦敗退で、敗者復活戦にも回れなかった。瞳に涙を浮かべ、引き揚げてきた中村は「まだ強さが足りないということだと思う」と、唇をかんだ。
北京五輪準決勝で敗れたアンとの因縁の初戦。開始20秒、序盤の一瞬のスキを突かれた。相手の小外刈りからの流れの中で、裏投げを食らい、技ありを奪われた。
「早い段階だったので、焦ってはいなかった」。しかし、流れは傾かない。1分20秒過ぎに大内刈りを浴びせ、一度は技ありの判定だったが、訂正されて有効に。その後も必死の攻勢で相手に指導2つを与えたが、あと一歩及ばなかった。直近では2戦2勝だった宿敵に五輪の舞台で再び敗戦。悔いだけが残った。
表彰台の頂上で笑うつもりだった。北京五輪で銅メダル。平成生まれ初のメダルを獲得した。胸を張ってもいい結果でも、中村に笑顔はなかった。「金メダル以外に価値はないです」。ロンドンにも大好きなお笑いコンビ“COWCOW”のDVDを持ち込むなど、笑うことが大好きな23歳は、あの日から試合に勝っても笑うことを封じた。
その後、09、10年と世界選手権を連覇しても、笑わなかった。「次に笑うのは五輪で金メダルをとったとき」。しかし、その誓いがかなうことはなかった。
前日、48キロ級の福見に続き、金メダルを確実視された2人が、まさかのメダルなしに終わった。4年後について問われた中村は「今はまだ…。これから整理して考えたい」。自戒するように話す姿が、敗戦の重さを際立たせた。