松本が日本人金1号!57キロ級初制覇
「ロンドン五輪・柔道女子57キロ級・決勝」(30日、エクセル)
松本薫(24)=フォーリーフジャパン=が、決勝でコリナ・カプリイオリウ(ルーマニア)を破り、今大会の日本選手団第1号となる金メダルを獲得した。初出場の松本は野性味あふれる柔道で勝ち進んだ。女子が五輪の正式種目となってから6大会目で、この階級(旧56キロ級を含む)では日本勢初の五輪制覇を成し遂げた。
勝利の瞬間、松本は園田隆二監督の元に駆けて行って抱き合った。決勝の相手は11年世界選手権銅メダルのカプリイオリウ(ルーマニア)。延長戦で栄冠をものにした。
「自分一人の金メダルじゃない。勝った瞬間に思いました。48キロ級も52キロ級の選手も一緒に頑張った成果です」
まさに“女ウルフ”だった。精かんな顔に鋭い眼光。どこか、元横綱千代の富士(現九重親方)を思わせる風貌だ。獲物を狙う狼のように体格で上回る相手に食らいついて、攻め続けた。
準決勝では、11年世界選手権9位のオトーヌ・パビア(フランス)に延長44秒、大外刈りで有効を奪い決勝に進出。この時点で銀以上のメダルが確定。福見、中村と軽量級の金候補が表彰台すら逃した負の連鎖にピリオドを打った。
1、2回戦を優勢勝ちで制し、準々決勝では北京五輪金メダリストのクインタバレ(イタリア)を攻め続けた。4分過ぎに小外刈りで技ありを奪い、ポイントでリード。そのまま逃げ切って4強入りした。
「金メダルしか考えていない」と自分を追い込んだ。5月、福岡での五輪選考会では決勝で敗れたが、世界ランク1位という国際大会での実績から代表となった。国内で負けて選ばれた悔しさ。「そこを直さないと」。詰めの甘さを反省点として本番に臨んだ。
試合前には腕をビュンビュンと振り、畳の上で大きくジャンプして気合を入れた。休まず攻め続け、勝っても厳しい表情を崩さなかった。
スタンドでは金沢から駆けつけた家族が応援。4きょうだいが「目指せ金メダル」と書いた横断幕を掲げ、調理師の父・賢二さん(59)は「こっちが緊張した」と汗を流した。
中学生のころ、母・恵美子さん(52)と交わした「五輪に連れて行ってあげる」という約束が、自身の目標にもなった。そして、メダル獲得という最高の結果を出した。5人きょうだいの4番目として金沢市で生まれ、6歳から柔道を始めた。東京の帝京大に進むが、骨折を繰り返した。ご飯代わりに菓子を食べるような生活を返上し、実家から送られた冷凍の手料理を食べた。白飯が嫌いなため、野菜と海老チャーハンも送ってもらった。食生活を家族に支えられてつかんだメダル。松本は客席に向かって感謝した。