内村 ロス五輪具志堅幸司以来の金!

 「ロンドン五輪・体操男子個人総合・決勝」(8月1日、ノースグリニッジ・アリーナ)

 1日、男子個人総合決勝で、内村航平(23)=コナミ=が初優勝し、日本に2個目の金メダルをもたらした。個人総合王者は84年ロサンゼルス大会の具志堅幸司以来28年ぶり4人目。3連覇中の世界選手権との個人総合2冠は、68年メキシコ五輪から2連覇した加藤沢男もなし得なかった、日本勢初の快挙。内村は今大会は精彩を欠き、団体総合は2位だったものの、個人総合で頂点を極めた。

 誰よりも美しく、誰よりもカッコいい。内村が突き詰めてきた体操が、ついに五輪に巣くう“魔物”をけ散らした。

 ほぼ完ぺきな演技を終えて迎えた最終種目は、得意の床。2度目の跳躍で、珍しくお手つきをした。「最後の最後にやってしまった。五輪には魔物がいるなと、再度思い知らされた」。それでも、絶対王者はひるまない。その後の着地をピタリと決めると、最後の3回ひねりも意地で止めきり、日本勢28年ぶりの個人総合優勝をもぎ取った。

 予選も、銀メダルに終わった団体決勝も、落下などのミスを出し、納得いく演技ができなかった。この日も「100点満点なら65点かな」と苦笑いしながらも「やっと自分が内村航平であることを証明できた」と胸を張った。

 ビリから始まった体操人生だった。3歳で体操を始め、初めて出場した地元の競技会。普段はできるはずのバック転が、1人だけできなくて泣いた。怒られると思っていた内村を、父和久さんが優しく抱きしめて言った。

 「『今日やった失敗は、明日やらなければいいんだよ』って。それは今でも覚えている」。団体決勝の悔しさから、自然と頭は切り替わっていた。胸に深く刻まれた父の言葉は、五輪の舞台でも支えとなった。体操ニッポンの長い歴史の中でも、五輪と世界選手権両方の個人総合を制したのは、内村が初めてだ。

 北京五輪の銀メダルから4年。表彰台の頂上で、日の丸が上がっていくのをじっと見つめた。「(3連覇した)世界選手権とは違った。本当に夢のよう。4年の重みと、魔物に何度もやられかけたな~っていう不思議な気持ちと」。

 ただ、その絶景も、充足感を与えてはくれなかった。「1番大きい試合の1番いい色のメダルを取った今でも、自分の体操人生で満足したなという感覚はない。自分の限界に挑戦したい。その中でリオ五輪も見えてくる」と、4年後への思いも新たに芽生えた。

 会場を後にする時、内村は言った。「今日は金メダルを取ったけど、明日には過去になる。また、いつもどおりですよ」。まだまだ表現したい理想の体操がある。だから、男は王道をゆく。はるかなる高みを目指し、自分の信じた道を、ただひたすら歩んでいく‐。

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