ボルト強かった!カール以来の連覇だ
「ロンドン五輪・陸上男子100m・決勝」(5日、五輪スタジアム)
世界最速はやっぱりボルト!世界記録保持者で、北京五輪金メダリストのウサイン・ボルト(25)=ジャマイカ=が9秒63の五輪新記録で優勝。84年ロサンゼルス、88年ソウル五輪を制したカール・ルイス(米国)以来、史上2人目の連覇を達成した。2位はヨハン・ブレーク(ジャマイカ)、3位にはジャスティン・ガトリン(米国)が入った。
出遅れた!並んだ!そして、突き抜けた!誰もが疑っていた、しかし、誰もが心の底で期待していた圧巻の“ボルト劇場”に、スタジアムを埋め尽くした8万人の観客の叫びが、驚喜の色に染まっていった。
刻まれたタイムは9秒63。世界記録には0秒05及ばなかったが、北京五輪の衝撃を上回るオリンピックレコードで、改めて世界最速を証明。そして、漆黒のロンドンの空に、心からの叫びがこだました。「俺が負けるとか疑っていたやつがいただろう!俺が最も偉大なんだ!」
あのボルトが本気だった。「少し滑った」というスタートでは少し立ち遅れた。しかし、中盤から一気の加速で先行していたブレーク、ガトリンをとらえると、4年前のような“欽ちゃん走り”で流すようなことはせず、歯を食いしばり、ただひたすら前だけを向いた。ゴールの瞬間は胸を突き出し、飛び込んだ。復権に向け、このレースにすべてを懸けていた。
ボルトの時代は終焉(えん)の時を迎えたかと思われていた。五輪直前のジャマイカ選手権で、同じクラブに所属する後輩ブレークに100、200メートルとも完敗。北京五輪後、世界のトップスターとなった男のプライドは、完全に打ち砕かれた。「ヨハン(ブレーク)に2度負けて目が覚めた」。ライバルの台頭、敗戦が土壇場で忘れかけていた闘争本能をよみがえらせた。
レース後にはお決まりの、弓を引くような“ボルトポーズ”も披露。自信もプライドも取り戻した。「生ける伝説となる第一歩を刻めた。素晴らしい気分だ」。主役の座を取り戻したジャマイカンはそう言ってニヤリと笑い、勝利の余韻に浸っていた。