メダリスト量産「虎の穴」栄光の自衛隊体育学校潜入
五輪代表、そしてメダリストを量産する虎の穴が日本にはある。1964年東京五輪から今回のリオデジャネイロ五輪まで夏季すべての12大会(不参加の80年モスクワを除く)に代表選手を輩出し、金メダリスト8人を含む18人のメダリストを誕生させた自衛隊体育学校(東京都練馬区)。リオにも9人の代表を送り込む、よりすぐりのスポーツエリート養成所に12日、迫った。
自衛隊体育学校。その建物の中に一歩足を踏み入れた瞬間から栄光の歴史と伝統に出迎えられる。入り口の壁には、学校が輩出した五輪の歴代メダリストの名前がズラリ。広報室に入ると、さらに圧巻の光景が待ち受ける。実物の金メダルやメダリストのパネル、自衛隊ならではの展示として実際に五輪で使用された銃まで並ぶさまは、日本における五輪の歴史そのものとも言っても過言ではない。
もともと1961年に体育指導者の育成と体育の調査・研究を目的として設立された自衛隊体育学校。使命に「オリンピック等国際級選手の育成」を掲げているだけに、選手もよりすぐりのスポーツエリートが集う。
自衛隊に入隊後即入校し、競技に専念する体育特殊技能者のスカウト基準はズバリ「世界で活躍できる資質がある者」。さらに五輪代表や世界選手権メダリストはSA級、国内トップや世界選手権代表はA級、国内2、3位はB級などとランク付けされ、庁舎内に張り出されるだけではなく、制服のワッペンでも一目で分かるように表示される。
そんなエリート養成所がロンドンまでの夏季五輪に送り込んだ日の丸戦士は、延べ134人。リオにも7月1日現在で9人の代表を送り込むことが決まっている。そして目前のリオはもちろん、原点回帰ともいえる20年東京五輪ではさらなる飛躍を期している。
施設の建て替えも進み、15年には体育特殊技能者の採用年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられた。山中洋二校長(56)は「東京では、体育学校でやっている9種目全部でメダル獲得が目標。特に重量挙げとマラソンは頑張ろうと思っている。三宅(義信)先輩、円谷(幸吉)先輩の復活を目指している」と意気込む。さらなるメダル量産へ、精鋭たちは今日もトレーニングに励む。
数々のエリートを生んだ自衛隊体育学校。何よりの要因は、充実した施設だ。約9万4500平方メートルの敷地には陸上競技場に屋内プール、マット4面を有する国内最大級のレスリング道場から馬術訓練場、射場まであらゆる種目の練習場がそろう。リオ五輪近代五種代表の三口智也(30)は「5種目全部できる環境はなかなかないので、すごくいい環境」と話し、バルセロナ五輪ライフル射撃銅メダリストの木場良平・射撃班監督も「環境は日本一」と胸を張る。
特筆すべきはナショナルトレーニングセンター(NTC)や国立スポーツ科学センター(JISS)と同じ最新のトレッドミルや筋力測定装置などを備えたマルチサポート室で、練習からサポート、フィードバックまですべてを1カ所で行える。
歴史、伝統も選手の意識をより高める。リオ五輪近代五種代表の岩元勝平(26)は「先輩方の伝統がたくさんあるので、恥じないようにやらないといけない。メダルを飾っている方がコーチをしていると、世界のトップクラスに指導してもらえると感じられる」。心身ともに鍛えられる環境が強さの源だ。