ベイカー茉秋「金」女手一つで育てた母に感謝…大型バイクに息子乗せて走った

 「リオ五輪・柔道・男子90キロ級・決勝」(10日、カリオカアリーナ)

 ベイカー茉秋(21)=東海大=が、決勝でリパルテリアニ(ジョージア)に優勢勝ちし、金メダルを獲得した。

 ベイカーは幼い頃、両親の離婚を経験した。「女手一つで育ててくれた母に感謝を伝えたい」。母・由果さん(46)は「リオまで連れてきてくれて、メダルも取れてうれしい」と笑顔でたたえた。

 東京・上野近くの下町で生まれ、幼稚園の頃は、姉にくっついてピアノを習う繊細な少年だった。猫背で弾く癖があり「柔道はピアノの姿勢を良くするために、小学校から始めたんです」と由果さんは振り返る。

 父は米国人で、最初の小学校はインターナショナルスクール。小学3年のころ、両親が離婚した。直後の大会で優勝した時、インタビューで「お父さんは何のお仕事をしているの」と問われ、さっと顔が曇った。

 試合の会場では、他の子たちが父親を相手に打ち込みで汗を流し、勝つと褒めてもらっていた。中学時代は、タオルと飲み物を持って駆け寄る由果さんに「あっちに行って」と嫌がったこともある。

 千葉県にある強豪の高校に進むと、練習で疲れ果てて帰宅し「テレビの音がうるさい」と八つ当たりした。朝はベッドから出てこず、口論することもあった。

 だが、母が贈ったスポーツバッグを同級生にいたずらで汚された時、周りが驚くほど激怒した。使えなくなったバッグを捨て、帰宅し何も語らぬ息子を「なくしたの」と責めた由果さん。後で事情を知って涙が出た。

 父親の穴を埋めるように、由果さんは「男らしくあろう」と努め、大型バイクの免許を取って息子を乗せて走った。肉の産地、野菜の種類にまでこだわる息子のリクエストに応じて料理を作った。

 リオデジャネイロのスタンドでは「茉秋」と書いた鉢巻きを締め、祈るように応援した。金色のネイルに、金色の時計とアクセサリー。「金メダル」一色にそろえた手を、表彰台の頂点に立つ息子に向けて大きく振った。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

五輪最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    デイリーおすすめアイテム

    注目トピックス