桐生 日本勢唯一の予選敗退 夢の続きは東京で「生まれ変わりたい」
「リオ五輪・陸上・男子100m・予選」(13日、五輪スタジアム)
男子100メートルの予選が行われ、日本歴代2位の10秒01のタイムを持つ桐生祥秀(20)=東洋大=は、10秒23で予選7組4位に終わり、日本勢で唯一予選落ちとなった。ケンブリッジ飛鳥(23)=ドーム=が10秒13で4組2位、山県亮太(24)=セイコーホールディングス=が10秒20で8組2位に入り、14日の準決勝進出を決めた。3連覇を狙うウサイン・ボルト(29)=ジャマイカ=は、10秒07で桐生と同じ7組の1位で準決勝に進んだ。
桐生にとって待ち焦がれた夢舞台での戦いは、あっという間に終わってしまった。憧れのボルトと同組。引退間近と言われる“人類最速の男”と一緒に走る機会に恵まれたが、ただ、その背中を眺めることしかできなかった。日本勢唯一の予選落ち。「なんと言うか、思いっきりいったので別に後悔はない。超楽しかった。力は出し切ったと思う。悔いがないわけじゃないけど」と、レース後は相反するいろいろな感情が交じり合った。
桐生本来の爆発力は影を潜めた。ボルトという千両役者の登場にスタジアムは予選にもかかわらず異様な雰囲気に包まれた。余裕のボルトが手を振る度に大歓声が降り注ぐ。「いつもと違う雰囲気を味わえた。嫌いじゃなかった」と話したが、動きには硬さが見えた。
一瞬の静寂の後のスタート。中盤以降は一気に離され、3着争いも競り負けた。10秒23のタイムも自己ベスト(10秒01)に遠く及ばない。桐生自身は「細かいことはまだ。硬かった?そういう風に見えたなら、そういうことなのかな」。自覚のないまま、夢舞台にのみこまれていた。
4年前はまだ「速い高校生」でしかなかった。「4年前に五輪に出るとか想像もしてなかった」と桐生。それでも驚異的な成長で、いまや日本で9秒台に最も近い男になった。だからこそ、ここから20年東京五輪までの4年に希望を抱く。「今回は自分にとって五輪はまだまだだった。でも4年で人は変われる。変わっていきたい」。この経験を糧にして、さらに成長を加速させる。