ラグビー、内村勇姿に燃えた錦織 燃え尽きないはずだったのに「体は限界」
「リオ五輪・テニス男子シングルス・3位決定戦」(14日、五輪テニスセンター)
疲労は頂点に達していたが、4年に1度の五輪に懸ける思いを持ったチームや他競技の選手の姿に後押しされた。錦織圭(26)=日清食品=が男子シングルス3位決定戦で四大大会14勝を誇るラファエル・ナダル(スペイン)に打ち勝ち、テニスの日本勢で96年ぶりのメダルを手にした。両手を突き上げ、仲間の元に駆け寄った錦織は「素直にうれしい。チームの支えが大きかった」と感謝した。
3位決定戦は四大大会やツアーにはない。準決勝でアンディ・マリー(英国)に完敗を喫し、気持ちの立て直しが鍵だった。普段ならホテルに閉じこもるが、選手村に滞在する今回はスタッフと食事をし、ナダル対策の映像を一緒に見た。高田充コーチは「切り替えが難しい中で次を向いていた」と明かした。
対策通りに積極的に前に出て攻め、第1セットを奪取。第2セットも5-2と相手を追い詰めた。そこで「メダルを意識した」と重圧に襲われ、このセットを奪われた。もう一度、錦織を奮い立たせたのは勝利とメダルへの執念だった。
開幕前は「無理をせず全米オープン(29日開幕)にピークを持っていきたい」と燃え尽きないことを意識した。テニス最高峰の場が四大大会である考えに変わりはない。しかし3度目の五輪を経験する中で、心に化学変化が起きた。
触媒はテレビで見たラグビー7人制の選手や同世代の体操男子、内村航平(コナミスポーツ)の勇姿だった。「同じ日本人の活躍を見ると燃える」。第3セット、力を振り絞り、自分のプレーを出し切った。
試合後「想像以上に出し過ぎちゃいましたね。体は限界に近い」と笑った。突き動かしたのは、普段の戦いにない、五輪だけが持つ力。1世紀近い時を経て、重みの詰まった価値ある銅色のメダルが日本にもたらされた。