高梨沙羅、感“銅”涙が止まらない ソチの雪辱果たした 日本女子ジャンプ初メダル
「平昌五輪・スキージャンプ女子ノーマルヒル」(12日、アルペンシア・ジャンプセンター)
涙の銅メダルだ。女子のノーマルヒル(ヒルサイズ=HS109メートル)を行い、高梨沙羅(21)=クラレ=が、2回とも103・5メートルの合計243・8点で念願の銅メダルを手にした。ジャンプ勢はソチ五輪男子ラージヒルで葛西紀明(土屋ホーム)が2位、団体が3位になっており、2大会連続の表彰台。女子では初のメダルで、通算12個目となった。
涙に暮れたソチ五輪から4年。悲願の頂点には届かなかった。それでも沙羅が平昌の空に架けた美しい放物線は、積み上げてきた努力が決して間違っていなかったことを示していた。「目指していた金メダルには届かなかったけど、最高のジャンプができた。この4年間のすべてをぶつけられた」。4位に終わったソチでの失意を経て大人の顔になったヒロインが、記念すべき日本女子ジャンプ初のメダルを手にした。
この4年間は、常に“自分”と向き合う時間だった。ソチ五輪までは、決められた練習メニューを「納得しないまま淡々とやり続けていた」という。苦い経験を経て、選手としての経験が深まるにつれ、敷かれたレールの上を走るだけだった姿勢が徐々に変化した。
「ここぞという時に力を出せる選手になりたい」。アスリート、そして1人の人間としての自我が芽生えていった。20歳から取り組み始めたメークも、自らを変えるためだった。競技出発の2時間前、身支度を調えて鏡に向かう。
「オフからオンに切り替えるためのスイッチ」。最初のシーズンは、強い自分を演出するために力強く目元を描いたが、今季は少しナチュラルに変えた。女性としておしゃれを楽しみながら、アスリートとして戦う姿をメークで表現しようとしていた。
152センチ、44キロの小さな体で重圧を背負ってきた。女子ジャンプというまだまだマイナーな競技の未来を一身に担い、先頭を走り続けてきた。その沙羅の姿を見て、この日金メダルを獲得したルンビや、銀のアルトハウスたちが台頭。その先頭を譲る日が、五輪シーズンだったというのは皮肉かも知れない。それでもルンビが「沙羅がいなければ、きっと私たちはこんなに成長できていない」と話す事実が、高梨沙羅というアスリートの価値を示している。
銅という結果には「悔しさとうれしさが半分」と楽しそうに笑った。「また新たな目標ができた。(次回)北京五輪で今度こそ金メダルを獲るために足りないところをしっかり成長させたい」。手にした勲章が、きっと高梨沙羅をさらに飛躍させる。