秋のG1が3連続売り上げ減の理由

 秋競馬のGIレースでの売り上げが伸び悩んでいる。

 今週末のエリザベス女王杯を皮切りに、暮れの大一番である有馬記念まで7週連続のG1開催に突入するが、ここまで終了した4戦のうち、前年比でプラスとなったのは初戦のスプリンターズSのみ。秋華賞5・6%減。菊花賞4・8%減。天皇賞2・4%減と、本来なら盛り上がるべきG1レースが、いずれも苦戦を強いられている。

 不良馬場で行われた菊花賞のように、レース当日の天候に左右される部分もあるにはあるが、短距離界の絶対王者・ロードカナロアが勝ったスプリンターズSを除いて、購買意欲をそそられるようなメンバー構成にならなかったことが、要因の一つと言えるだろう。

 菊花賞はダービー馬のキズナに加え、皐月賞馬も不在の中、両レースで2着だったエピファネイアが圧勝した。

 秋の天皇賞は東京2000メートルで争われ、本来なら多士済々のメンバーが集まる条件だが、今年はG1、4勝のジェンティルドンナこそ出走したものの、オルフェーヴルは不在で、G1馬はわずか3頭。結果的には先々が楽しみなジャスタウェイという新星が出現したとはいえ、例年より小粒なメンバーだったことは否めない。

 出走すれば、恐らく馬券売り上げに貢献する存在のオルフェーヴルとキズナ。日本競馬界を牽引する総大将と、今後の競馬界を背負って立つであろう若大将だが、この秋に選んだのは菊花賞や天皇賞、ジャパンカップではなく、フランスの凱旋門賞だった。

 日本馬悲願の初制覇という大命題を背負っての挑戦。両陣営は8月末に渡仏、9月15日の前哨戦を挟んで、10月6日の本番を迎える形を取った。競馬ファンは2強の走りに熱狂したが、その代償として国内秋競馬での主役不在という、寂しい現実に直面している。

 89年の秋天皇賞には、オグリキャップ、スーパークリークにイナリワン、メジロアルダン、ヤエノムテキなど当時のほぼベストメンバーが集まった。まだ枠連しかなかった時代だが、大枚をつぎ込み、熱く燃えたあの日が懐かしい。

 大外の14番枠から好スタートを切った武豊騎乗のスーパークリークが終始、好位の2、3番手をキープ。最後の直線、中団から鬼脚で猛追したオグリキャップを退け、ゴールに飛び込んだ瞬間は、今も脳裏に焼き付いている。

 国内最強馬の凱旋門賞挑戦の流れは、来年以降も変わらないだろう。斤量面で有利とされる3歳馬の挑戦も、これまで以上に増える可能性がある。

 海外も悪くはないが、国内でそれ以上の熱い戦いを見たい。「昔は良かった」。こんなことを言うのは、年を取った証拠だろうか。

(デイリースポーツ・玉森正人)

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