ヤクルトの助っ人補強がうまい理由
26日のプロ野球コンベンションで、今季の最優秀選手(MVP)が発表される。有力候補となっているのは、今季60本塁打を放ち、49年ぶりにシーズン最多本塁打記録を更新したヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手だ。優勝チームではない、ましてや最下位チームからのMVP選出されるとなれば、2リーグ分裂後初の快挙となる。
そこでクローズアップされるのは、ヤクルトフロントの外国人補強における“眼力”だ。特に打撃部門でのタイトルホルダーの多さは特筆に値する。振り返ると、パリッシュ(89年本塁打王)、ハウエル(92年本塁打王)、ホージー(97年本塁打王)、ペタジーニ(99年本塁打王、01年本塁打、打点王)、ラミレス(03年本塁打、打点王、09年首位打者)、そして今季まで3年連続本塁打王のバレンティンと“当たり助っ人”を多く獲得している印象がある。打撃部門だけでなく投手にも目を向けると、ブロス(95年防御率)、ホッジス(02年最多勝)、グライシンガー(07年最多勝)、バーネット(12年最多セーブ)とタイトルホルダーが多数いる。
最近では1度、日本球界に在籍し、一定の成績を挙げた助っ人を獲得する“安全策”に出る球団が多い中で、ヤクルトの場合はオマリーやラロッカ、シコースキーらを除き、ほとんどが、“自前”の調査で獲得し、活躍している外国人選手が多いことも特徴的だ。
球団関係者は、その秘訣を「調査力」と断言する。「何を感じるか。見る人のアンテナ、感受性でしょう」。独自性も成功のポイントとなっている。「活躍する選手というのは、ユニホームの着こなしひとつ見れば分かる」としたうえで、対象選手が本塁打を放った際は、ダイヤモンド1周をビデオに収める球団もある中、「打球角度から、落下までを追う」のがこだわりであるという。
また、リストアップから視察、調査、交渉、契約、入団後のケアに至るまで、国際担当者1人にすべて一任するのが球団方針だ。「この仕事は、後手に回ったらだめ」(球団関係者)といい、確かな眼力で助っ人をリストアップし、スピーディーに契約まで話を進める。この業務を1人ですべて遂行するからこそ、円滑にサインまで漕ぎ着けるメリットがある。球団によってはそれらを分業制にしていることがあるが、ヤクルトは他球団に先んじてこのシステムを確立したことがいい結果を生んだといえる。
視察の際には、日本に適応できるかどうかのカギのひとつとなる、性格についての調査も入念に行う。バレンティンに関しても、大リーグ関係者から「人の言うことをよく聞く人間だから、大丈夫じゃないか」という証言を得て、獲得の決め手のひとつとした経緯もある。
入団後も、伝統的にアットホームなチームカラーが、外国人たちが成績を残しやすい環境となっていることもあるという。
今季日本一に輝いた楽天に代表されるように、助っ人の活躍が、シーズンの成績を左右すると言われる。来季は最下位を脱出し、上位進出を狙う小川ヤクルト。本塁打数とチーム成績とが結びつくことが、ファンが最も喜ぶ形である。
(デイリースポーツ・福岡香奈)