移籍システムを巡る“綱引き”の行方

 日米間で交渉が難航していた新ポスティングシステムが、17日に正式合意を迎える。新移籍制度は従来の「入札制度」とは異なり、日本の球団が移籍金(上限2000万ドル=約20億円)を設定。その額で獲得を希望する米球団全てに交渉権が与えられるという、全く別の制度となった。

 約1カ月半に及んだポスティング騒動。関係者は「日米の利害関係者が綱引きをしている状況」と例えた。結果、「敗者」となったのは入札金額を抑えられた日本の球団。一方、要望していた複数球団と交渉できる権利を得た日本の選手会は、「勝者」の位置づけとなった。

 関係者は新移籍制度について「選手には8年で得られる海外FA権が与えられたようなもの」と説明する。現在、日本の選手が海外FA権を取得するには9年が必要となる。だが、球団の立場からすると9年目のオフにFA移籍させるならば、移籍金も期待できる8年目オフに移籍させたい、と考えるケースが増えるだろう。

 もともと、ポスティングシステムはFA権取得以前に海外移籍を望んだ選手のために、球団が特例で認めている制度。選手にとってはより魅力ある制度となり、選手会の松原事務局長も「これからの選手にとってはいい制度。選手から特に不満が出るということはないと思う」と、納得の表情を浮かべる。

 だが、評価の言葉を並べた後で松原事務局長は「ポスティングシステムはどちらかというと球団の権利。(選手の権利は)本来はFAだから」と、付け加えることも忘れなかった。選手会が最も求めているのはFA権の取得期間の短縮であり、タイミングを見計らって“FA論争”を起こすことになるだろう。

 5日に開催された選手会総会では、FAに関する意見交換も行われた。現在のFA権は国内は8年、海外は9年で取得できるが、毎年、新たに取得するのは20人程度。選手としてのピークが過ぎてから取得する場合があることや、約900人の選手がいるプロ野球界では、大多数の選手に手が届かない制度であることを指摘する声が上がったという。

 松原事務局長は、ただ単純に期間を短縮するのではなく「個人的にはシーズンではなく、在籍年数(で取得できる制度)のほうがいいと思っている」と話す。現在、FA権の取得期間は1軍の登録日数で計算されているが、在籍年数なら取得できる可能性がより広がるという訳だ。

 だが、これら選手会の主張は、球団側に幾度も跳ね返されてきた。FA権の取得期間の短縮は、資金力のない球団にとっては主力選手の早期流出で戦力ダウンにつながり、経営面でも影響を受けるのは確実。リスクの方が大きい。

 また、球界全体の戦力バランスが崩れ、リーグとしての面白みを損なう危険性をはらんでいる。移籍の活性化は注目も集めるが、ファン目線では選手個々に対する愛着が薄れ、人気低下につながる可能性もある。

 新ポスティングシステムは要望が通った形となり、松原事務局長は「FAは難しくなるよ」と覚悟も口にする。ポスティング問題に続き、FA短縮を巡る球団と選手会の“綱引き”。決着に相当な時間を要するのは間違いなさそうだ。(デイリースポーツ・佐藤啓)

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