朝日杯フューチュリティSの未来
第1回の1949年からずっと中山競馬場で開催されてきた朝日杯フューチュリティステークス(FS)が、来年度から阪神競馬場に移行する。ひょっとしたら生きているうちに中山での朝日杯を見ることのできる機会は、今年が最後かもしれない。
JRA賞最優秀2歳牡馬(2000年まで旧馬齢表記のため3歳牡馬)は1988年以降、朝日杯の優勝馬が獲得してきた。だが最優秀2歳牡馬のクラシック制覇は、ロゴタイプが今年の皐月賞を勝つまで19年間も成し遂げられず、朝日杯イコール世代最強を決める一戦という図式は、1993年優勝のナリタブライアンを最後に崩れ去っていた。
その最大の要因は中山の芝マイルコースにある。圧倒的に外枠が不利なため、クラシックを狙う大物牡馬は朝日杯ではなく、年末に阪神で行われるラジオNIKKEI杯2歳ステークスに向かうのが王道路線になっていた。
紛れの少ない阪神のマイル戦で、2歳王者を決めることに異論はない。ただ、腑に落ちない点がいくつかある。まずは施行時期。今まで通り、2歳牝馬限定の阪神ジュベナイルフィリーズ(JF)の1週間後に行われるのだが、その結果、2歳G1が阪神マイルで2週連続で開催されることになる。朝日杯は牝馬の参加もOK。そうなると、ダブル登録をして阪神JFの抽選で漏れた馬が使ってくるケースが多発するはず。今年の朝日杯に出走するベルカントのように、賞金を満たしている馬でも相手関係を熟慮して狙ってくる陣営もあるだろう。
ウオッカ、ブエナビスタ、ジェンティルドンナの名前を出すまでもなく、近年の競馬界は女性上位。今年の2歳牡馬は、ほとんどの重賞を牝馬にさらわれており、その傾向にさらに拍車がかかっている状態だ。阪神開催の朝日杯が、牝馬に蹂躙される可能性はかなり高いのではないだろうか。
もうひとつは有馬記念当日に行われるホープフルステークスの存在だ。舞台は皐月賞と同じ中山2000メートルでG2に格付け申請中。1着賞金は朝日杯より500万円少ないだけの6500万円。今までのラジオNIKKEI杯2歳S以上にクラシックの予行演習となり、賞金もG1級となれば、強い牡馬はさらに朝日杯を敬遠するようになる。
このままでは朝日杯の覇者が最優秀2歳牡馬に選ばれてきた歴史が途絶えるのは時間の問題。将来的にホープフルSがG1へ昇格した際、朝日杯を名乗るのか。それとも朝日杯はNHKマイルカップに続くマイラーへの道しるべとなるのか。来年から、いちょうステークスや京都2歳ステークスも重賞に昇格するように、2歳重賞拡大路線は大賛成だが、朝日杯というブランド力はもっと大切にしてほしかった。(デイリースポーツ・秋山哲範)
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