J1昇格の徳島はジンクスを破れるか
J2徳島が12月8日に東京・国立競技場で行われたプレーオフ決勝で京都を下し、四国初のJ1昇格を果たした。
前半の21試合を終えた時点では15位に低迷していたが、7月の第22節・札幌戦から12試合連続負けなしを記録するなど夏場に急浮上。レギュラーシーズンを20勝7分け15敗の4位で終えると、堅守を基盤としたサッカーで千葉、京都と対戦した昇格プレーオフも制し、自動昇格の1位・G大阪、2位・神戸に続く「3枠目」を勝ち取った。
J2参入9年目での悲願達成。地元・徳島が歓喜に沸いたのは当然だが、この「3枠目」には、ちょっと気になるデータがある。
J2の3位(またはプレーオフ勝者)でJ1に昇格したチームは、ここ4年連続で、わずか1年でJ2に逆戻りしているのだ。
その4クラブの成績は以下の通り(【】内の数字は勝ち点)。
09年湘南(3位)→10年J1・18位(3勝7分け24敗【16】)
10年福岡(3位)→11年J1・17位(6勝4分け24敗【22】)
11年札幌(3位)→12年J1・18位(4勝2分け28敗【14】)
12年大分(6位)→13年J1・18位(2勝8分け24敗【14】)
4クラブのうち、3クラブが最下位で降格。J2で6位ながら、プレーオフを勝ち抜いて昇格した13年の大分は、J1でわずか2勝しかできなかった。それほど力の差があったということだろう。
この“ジンクス”を知った上で、徳島の小林伸二監督(53)は冷静に分析する。
「ウチは今年、J2で20勝。42試合のうち、半分も勝っていないんです。プレーオフというシステムのおかげで昇格はできたが、J1では当然、厳しい戦いになると覚悟しています」
02年に大分、08年に山形をJ1に導き、Jリーグきっての“昇格請負人”として知られる小林監督。J1の過酷さを十分に体感しているからこそ、昇格1年目の来季は現実的な目標を掲げる。
「勝ち点40。そのあたりが目標ラインになる」
13年シーズンでいえば、14位の大宮が勝ち点「45」、15位の甲府が「37」。冷や汗をかきながら何とか残留、といったポジションだ。指揮官は険しい表情で来季に思いをめぐらせながらも、「絶対に残りたい!」と言葉に力を込めた。
少なからず自信はあるだろう。
山形を率いてJ1に乗り込んだ、昇格1年目の09年。前年から強化費がほとんど上積みされず、チームの戦力は横ばい。専門誌などによる開幕前予想は「最下位」で一致していたが、終わってみれば山形は10勝9分け15敗、勝ち点「39」の15位で見事残留を果たした。その貴重な経験値が小林監督にはある。
スポーツ飲料などで広く知られる大塚製薬がメーンスポンサーの徳島。安定した資金力を背景に、J2では他のクラブがうらやむ選手層を誇ってきた。
13年シーズンも、日本代表経験があるMF柴崎晃誠(29)、新潟や名古屋などで活躍したDF千代反田充(33)らが加入。J1で実績のある選手を継続的にそろえていたことが、昇格への原動力となった。
とはいえ、J1で生き残るには現在の戦力では不足だろう。中田仁司強化部長は「今いる選手を基盤として、必要なところには的確に補強したい」と話した。勝ち点「40」の青写真は、補強の成功なしには現実のものとはならない。
不吉なジンクスを作ってしまった前述の4クラブ(湘南、福岡、札幌、大分)は、過去にも昇降格の経験がある“常連”チーム。その意味では、“新参者”の徳島のJ1初挑戦は新鮮な魅力がある。
同じ四国を本拠とするJFLのカマタマーレ讃岐が、鳥取との入れ替え戦を制してJ2昇格を果たした。徳島と讃岐のダブル昇格により、“後進国”と言われた四国のサッカーは、にわかに熱を帯びている。この流れを途切れさせないためにも、徳島にはジンクスを打ち破り、J1残留を果たしてほしい。
(デイリースポーツ・浜村博文)