あの余波か…!?契約更改保留者が激減
年末を迎え、プロ野球の契約更改もほぼ終了。日程上の都合などで越年した選手も数えるほどだ。ここまでの様子を見ると、何か例年とは違う雰囲気が漂う。報道する側としても、どうもいつもの調子ではない。
お気づきだろうか。球団側の提示額を不服として、もめる選手がほとんどいないのだ。かつては多くの球団でシーズンオフの風物詩のようにもなっていた選手と球団との“衝突”。交渉がこじれた揚げ句、移籍へと発展するケースもあった。
今オフ、1回目の契約更改交渉で保留した選手(12月28日現在)を調べてみた。すると、広島・小窪、DeNA・鶴岡、金城、ソフトバンク・柳瀬、オリックス・金子の5人。昨年の保留者は全球団合わせて20人だった。20人でもひと昔前に比べれば少ないが、今年は不自然なまでに激減している。
あるセ・リーグ関係者は「昔よりも事前に下交渉をする選手が増えていることはあるかもしれない。それに、お金でもめている印象をファンに与えないように、球団も配慮して妥当な範囲で選手が納得してくれそうな金額を提示している。選手側にも、もめるイメージを嫌って一発でサインしようという姿勢が見える」と話す。
別のセ・リーグ関係者は「全部ポイント制。数値化している。それをもとに算出している。精密なんです。1試合ごと、投手なら1イニングごと。(選手は)分かりやすいと思いますよ」と交渉の席で提示されるデータの変化を要因に挙げる。もちろん昔から査定は数値化されていたが、近年ではパソコンなどの導入でより細かく、客観的に算出されている。“どんぶり勘定”の部分が薄まれば、選手も納得しやすいというわけだ。
ただ、下交渉をする選手の数は昨年と今年で大きな違いはない。“もめないように”という球団側と選手側の意識も、この1年で変わったわけではない。精密な査定は昨年も行われていた。いずれもここ何年間かの保留者減少についての理由としては説得力がある。しかし昨年の20人から今年の5人へ激減した理由としては…。そこで浮かび上がってくるのが、あの余波だ。
ある球界関係者は「選手は口に出さないけど、やっぱり落合さんの影響はあると思う」と指摘する。セ・リーグ関係者の一人も「落合さんの影響は少なからずある。成績を残せなければ下げられる、ということが浸透したのでは」と推測する。
今季4位に低迷した中日は、落合博満ゼネラルマネジャー(GM)のもと、信賞必罰の契約が相次いだ。実績のある主力であろうと、新人であろうと関係なく、多くの選手が減俸となり、総額で推定8億円超を削減した。
賛否両論のあった“オレ竜更改”だが、他球団の選手の意識変化につながった可能性はありそうだ。選手が“もし自分が中日の選手なら…”と抑え気味に自己査定した上で交渉に臨めば、実際の提示金額が妥当な評価、もしくはそれ以上に思えてくることだろう。その結果、保留せずに一発サインとなっても不思議ではない。となると“オレ竜更改”は、球界全体を改革するほどの威力があったということになる。
(デイリースポーツ・岩田卓士)