年が明け、各球団で新人合同自主トレがスタートした。巨人では９日から８人の新人たちが、将来のスター選手を目指して寒空の下、汗を流している。注目は、球団では阿部慎之助以来となる捕手でのドラフト１位で日本生命から入団した小林誠司だろう。

　ポスト阿部として期待される小林。遠投１１５メートルを誇る強肩を含めた守備が売りで、自主トレ初日にキャッチボールの相手を務めた同３位の田口麗斗は「球の回転がすごい」と仰天。昨年、社会人ベストナインを獲得した実力の一端を早くも見せつけている。

　高校、大学、社会人で様々な投手の球を受けてきた小林の強みは経験豊富であること。社会人出身で大成した捕手の代表格は元ヤクルト監督の古田敦也氏だろう。古田氏は１年目こそ１０６試合の出場で打率．２５０だったが２年目で開花し、首位打者を獲得。当時ヤクルトの監督だった野村克也氏の教育を受けながら、名捕手への道を歩んだ。

　小林の場合はどうか。間近に阿部という最高の生きた教材がいる。原監督はキャンプの１軍帯同を明言しており、本人も「阿部さんのすべてを見たい」と意欲的だ。阿部がまだまだ元気で即レギュラーというのは非現実的であるが、その分、吸収できる期間が長くなることはプラスに働きそうだ。

　課題は打撃だろう。本人もそのことは十分に自覚しており、昨春から「球の速い投手相手だと、体の動きが早くなるので、いつも同じ形で打てるように」と、打撃マシンから約８メートルの近さに立ち、打ち返す練習を導入。創意工夫しながら打撃力の向上に取り組んでいる。

　巨人の捕手のドラフト１位は小林を含め５人。阿部のほかに、８０年代に活躍した山倉和博氏がいる。常勝・巨人の名捕手の系譜を引き継ぎ、ポスト阿部としての地位を確立することができるか。「キャンプで１軍になるためにやっているわけではない」。本人の高い意識とともに、その環境は十分に整っていると言えそうだ。

（デイリースポーツ・野畑圭司）