「地味補強」徳島はJ1でいかに戦うか

 ウワサされていたほどの大型補強はなかった。J1に昇格した徳島が15日に新加入選手会見を行い、6人の新メンバーがお披露目された。そこには大物外国人や日本代表を経験しているような有名選手はおらず、四国で初めてJ1の舞台に上がる高揚感に比べれば、やや地味な印象の会見となった。

 特徴といえば「若さ」だ。

 6人の平均年齢は21・5歳。柏のMFレアンドロ・ドミンゲスの弟・クレイトンの25歳が最年長。広島に移籍したMF柴崎の穴を埋めるべく浦和から獲得したボランチのMF小島秀仁が21歳。C大阪から獲得したサイドプレーヤー・小暮大器は19歳。それほど実績はなくても、若い年代で代表入りするなど将来を期待されるメンバーが加わった。

 小林伸二監督は、若手中心となった補強の意図を、力を込めて説明した。

 「J1では相手にボールをキープされる時間が長くなる。辛抱強く守らなければならず、そのためには活動量のある若い選手が必要だった。J1にチャレンジできる6人が来てくれた」

 会見に同席した中田仁司強化部長には、チームの強化費について報道陣から質問が集中した。

 J2時代のクラブ総予算は約10億円で、そのうちチーム強化費は約5億円。J2では平均以上の額だが、平均約30億円(強化費約15億円)の予算規模で運営するJ1クラブに比べれば圧倒的に少ない。

 徳島のメーンスポンサーはスポーツ飲料などで広く知られる大塚製薬。J1昇格を果たした暁には強化費が大幅に増額され、次々に大物選手がやって来るのではないかと、関係者やサポーターの間ではささやかれていた。

 そんな臆測にクギを刺すように、中田部長は「大塚製薬は『金を出すから強くなれ』なんて言う企業ではない」と力説。「J1では一番少ないですよ」と、周囲が思うほど強化費は増えていないことを示唆した。

 そんな中、徳島はJ1でいかに戦うのか。小林監督は、チームが始動した16日朝のミーティングで「40得点、40失点、勝ち点40」の目標を選手たちに提示した。

 J1残留に向けた具体的ノルマといえる3つの「40」の中でも、カギを握るのが「40失点」だろう。昨シーズンでいえば、J1でベスト5に入る数字。ベテランのDF千代反田が「達成できれば、昇格と同じくらいの価値がある」と言うように、初挑戦の徳島にとってかなり高いハードルとなるだろう。これをクリアできれば、残留という結果はついてくるはずだ。

 少ないチャンスをものにし、我慢強く守り抜く。華麗ではなくても泥臭くても、15位以内に残るためにあくまで現実的な戦いを‐。6人の若手獲得と「40失点」の目標には、守備重視を志向する指揮官の強い決意が込められている。

 かつて指揮した大分と山形で、小林監督は昇格1年目のチームを見事残留させている。「3度目も落としたくない。『落とさない人』になりたい!」と少しおどけながら話し、「金で選手は買えるが、チームは金で買えない」と続けた。その言葉には、就任から2年間かけて築き上げたチームへの自信、J1昇格を成し遂げた選手たちに対する敬意がにじみ出ていた。

 6人の新加入選手の顔を眺めながら、指揮官は「それぞれ特徴のあるプレーヤー。新しい魅力をどう生かすか、私自身がいい準備をしたい」と話した。中田部長は「地味でいいじゃないですか。目立たなくても、何をしでかすか分からない徳島。これでいきましょう」と威勢よく笑った。

 既存の戦力にこの6人が融合し、どんな戦いを見せてくれるのか。3月1日、アウェーの鳥栖戦から始まる徳島のJ1元年。派手なサプライズを期待しながら、四国初のチャレンジを大いに楽しもう。

(デイリースポーツ・浜村博文)

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