帝京大のラグビー連覇はどこまで続くか
第50回全国大学ラグビー選手権決勝戦は、1月12日に東京・国立競技場で帝京大‐早大戦のカードで争われ、白熱の好ゲームとなったが、帝京大が41‐34のスコアで早大を破り前人未踏の5連覇を達成した。これまでは19~21回大会の同志社大の3連覇が最高で、すでに昨年に新記録となる4連覇を決めていたが、さらに記録を更新したことになる。3連覇した当時の同大には、平尾誠二、大八木淳史、東田哲也と代表クラスのスターがそろっており、伝統校の早大も明大も出来なかったV3は快挙といわれていた。それだけに選手が毎年入れ替わる大学ラグビーでの5連覇はまさに偉業と呼べるものだが、帝京大の場合はさらに記録が伸びていきそうなのだ。
決勝戦のスタメン15人のうち4年生は4人だけ。以下3年6人、2年4人、そしてスタンドオフには1年の松田力也が入った。特にFWだけみれば、4年生はナンバー8の副将・李聖彰(リ・ソンチャン)だけ。しかも、後半21分に李と交代で入ったのは1年生の飯野晃司なのだから恐れ入る。主将のプロップ垣永真之介をはじめ、FW1、2列がすべて4年生の早大とは対照的なメンバー構成。先々を見据えた岩出雅之監督の起用プランは明確で、上級生になった時にリーダーになることを見込まれた人材には早い段階から“リーダー教育”を施すという。
環境に慣れていない1年生に練習以外の負担をかけまいと、掃除や食事の配膳などは4年生が率先して行うことは広く知られるようになったエピソードだが、キャプテンの選出も原則は選手間に任せている。「自分たちで選んだキャプテンなんだから、みんなでサポートするように」と、指揮官は選手たちの自主性を促す方針を徹底させる。「決して放任はしていない。でも、過干渉もしない」と絶妙の距離感でチームをマネジメントする。
大学選手権5連覇を目指した今シーズンは、同時にトップリーグへの挑戦という目標も掲げた。関東大学対抗戦Aで7戦全勝、選手権でも5連勝で大学相手には12連勝。そのうち10点差以内だったのはわずか3ゲームしかない。はっきり言えば試合前から大量得点になると分かるゲームも少なくない。大学ラグビーというカテゴリーの中でのシステムで、いかにチーム力を高めていくか。「守りに入らせない。油断させない。目の前のことに集中させる難しさを感じた」と、決勝戦を終えたあとの共同会見で岩出監督は常勝軍を率いるジレンマを吐露した。だからこそ「5連覇の要因?精神面の成長です」と言い切り、最後まで気を緩めず戦い抜いた選手たちを賞賛した。
後半に松田が奪った2つのトライに、「我慢して使ってきた甲斐があった」と岩出監督は相好を崩した。将来のジャパン入りが期待される2年生のフッカー坂手淳史に対しては、「今すぐにでもキャプテンが出来る」と規律性を高く評価する。部員全員がチームのために自分の役割を徹底して行うことで、強固に築き上げられた勝利のメンタリティーは、しばらく揺るぎそうにない。
(デイリースポーツ・北島稔大)