広島黄金期のスター選手とかぶる鈴木誠

 2月1日からプロ野球の春季キャンプが一斉に始まる。昨季、16年ぶりにAクラス入りした広島は昨年に続き、今年も日南からスタートする。

 若鯉たちが開幕1軍入りをかけてしのぎを削るキャンプ。その中で注目選手は鈴木誠也だ。12年度ドラフト2位で二松学舎大付から入団。高校時代はエースだったが、広島では内野手としてプロ生活をスタートさせた。

 昨季は終盤に初めて1軍昇格。9月16日の巨人戦で初安打となる左前適時打を放った。高卒新人野手が1軍昇格するのは、広島では1999年の東出輝裕以来14年ぶりだった。

 鈴木誠を取材しながら感じるのは、意識の高さだ。「今年やらなければ終わりというか、そういう気持ちがある」。高卒2年目。だが今年に向けて背水の陣で臨んでいるように思える。

 その言葉通り鈴木誠は1月の自主トレ期間中、バットを振らない日は1日もなかった。どんなに行事が入っていても「バットを振らないと寝られない。不安になる」。夕食を終えると自ら室内練習場の照明を点灯させ黙々とマシン打撃を行った。その姿に球団関係者は「アイツは他の選手と目が違う。ここ(2軍)にいても仕方がないと思っているのがよくわかる。意識が高い」と目を細めた。

 その姿、発言に、かつてのスター選手が脳裏をかすめた。33試合連続安打の日本記録(79年)を持つ広島黄金期のリードオフマン・高橋慶彦氏だ。入団時「このままだとすぐにクビになると思った」とプロのレベルの高さに驚愕。バットを振らない日はなく、遠征先で外食しても、必ず宿泊先でバットを振り、眠りについていたという。

 練習すれば必ず1軍に昇格できるというわけではない。それでも鈴木誠は「ライバルは自分自身。この世界に入ったからには他の選手に負けられない。とことんやってダメなら仕方がない」と意気込んだ。

 昨年11月から始めたウエートトレーニングによる肉体改造でパワーアップに成功。体重は78キロから一気に87キロに増加した。「去年はバットに振られている感じだったけど、今年は振れる」。さらに打撃フォームをすり足に変更したことで、より確実性も高まった。

 「開幕1軍が最初の目標。やらないといけない。結果を残して勝ち取りたい」。鋭い目と引き締めた表情に、覚悟がにじんでいたい。

(デイリースポーツ・市尻達拡)

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