ホープ遠藤は相撲界の救世主になれるか

 大相撲の初場所(東京・両国国技館)で真冬の旋風を巻き起こした男、遠藤聖大。西前頭10枚目で11勝を挙げ、初の三賞となる敢闘賞を獲得した。昨年のデビュー時からホープの呼び声が高かったが、場所後は豆まきをはじめイベントに引っ張りだこになるなど人気が大ブレーク。同時に強い日本人力士誕生への重い十字架を背負う形になった。 遠藤の取り口は一言では表せないが、勝負前に相手を研究した上であらゆる展開を考え抜き、たぐいまれなセンスと機敏な動きで対応するとでも言おうか。簡単に言えばパワーより巧さの相撲だ。 実際、初場所では相撲勘のよさを随所で見せた。初日こそ翔天狼に押し倒しで敗れたが、2日目の嘉風戦から6連勝。土俵際をまるで足先に目がついているように渡り歩いたり、時にサーカス相撲のような勝ち方で観客を沸かせた。 9勝2敗で迎えた12日目は、ついに大関戦(相手は琴奨菊)が組まれた。割(対戦)を組む審判部も人気者の遠藤を大関に当てることで集客増を考えたのだろう。また、遠藤の本当の力量を試そうとしたのかもしれない。 結果は、立ち合い一気に琴所菊に寄り切られた。遠藤はまわしを狙ったようだが、強烈な出足を持つ琴奨菊にはまったく通用しなかった。 だが、これで終わらないのがホープたるゆえんか。翌13日目も元大関の関脇琴欧洲が相手。仮に敗れれば、化けの皮がはがれる?ピンチだったが、見事なすくい投げで身長2メートル4センチの大先輩を土俵に沈めた。 実は審判部は13日目の時点で14日目の相手を前頭西16枚目の里山としていた。さらに千秋楽も新入幕の貴ノ岩。対戦相手のレベルがまるでエスカレーターのように極端に上下したわけだが、審判部としてもまだ三役以上との取り組みは荷が重いと判断したフシはある。 デイリースポーツ評論家の友綱親方(元関脇魁輝、協会理事)は遠藤をこう評している。 「遠藤の一番いいところは今までの学生出身力士と違い、正攻法の相撲を取れて、なおかつ勝てるという点。それは本当に力があるからできること。これからもこの正攻法の相撲を磨いてほしい」 和製横綱の誕生を切望する北の湖理事長(元横綱)はあえて課題を指摘する。 「遠藤は相撲力(ちから)がまだ足りない。琴奨菊のような圧力のある力士相手だと一気にもっていかれてしまう。上位相手ならまわしを狙う前にまず思い切り当たってほしい」 だが、同理事長は期待の言葉も忘れない。 「でも、それは上位と当たっているうちに自然に身につくもの。どんどん当たっていけばいい。そうすれば当たり負けしなくなり、あのうまさが上位相手でも生きてくる」 3月の大阪場所(9日初日、ボディーメーカーコロシアム)では前頭筆頭まで番付が上がる可能性がある。当然、白鵬、日馬富士の両横綱をはじめ全三役と激突する位置。ホープ遠藤が本物の救世主になる器なのかどうか、春場所で勝ち越しでもすれば、自ずと答えは出る。(デイリースポーツ・松本一之)

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