虎投を支える二人の投手とは…
若虎を覚醒させるために汗を流しているのは、首脳陣だけじゃない。若い投手が多い阪神の宜野座キャンプの中にあって、二人の投手の存在感が際立っている。チーム最年長右腕の福原と、ローテの軸である能見だ。
昼前からのブルペンでは、貫禄十分の投球を見せる。ただ、今キャンプはそれだけじゃない。投球後、ランニングや打撃練習などもこなして自分自身のメニューを消化。年齢や実績を考えれば、そこで球場を離れて宿舎に戻ってもおかしくないタイミングで、選手から「先生」へと姿を変える。
場所は宜野座球場の室内練習場の片隅。中西投手コーチが投手陣のブルペン投球を振り返りながら、若手投手にネットピッチを繰り返させてフォーム修正を行っていく。そこに、福原と能見が毎日のように加わる。中西コーチからの要望もあり、実際にフォームの手本を見せたり、熱心に助言を送っている。
福原は「中西さんにも言われてやってるんです」と話す。例えば、同じ中継ぎ右腕の松田には、投球時の左腕の使い方をアドバイス。投げる方の右腕の使い方に意識が集中していた松田は「本当に参考になりました」と笑顔で振り返った。
また、能見も日替わりで選手に声をかけている。決して自身の理論を押しつけることはない。優しく語りかけ、選手の考えも聞きながら「ヒントを与える」といったスタンスを崩さない。
「(助言が)合うかは分からないですけど、プラスアルファになるなら。プラスにとってくれるなら」と能見。オフから、チーム一丸となる重要性を語った。どこか物静かでクールな印象もある左腕だが、前向きにチームのことを語り、発信する機会も増えた。すべては優勝のためだ。
基本的に、実績のある選手はキャンプ序盤はマイペースで調整を進め、目立った動きを行わない。どちらかと言えば「静」の時期に、二人は自身の調整と別のところで積極的な「動」を見せる。
能見は「若い選手にもがんばってもらわないと」と話す。願うのは、新たな力の台頭への期待。だからこそ動く。ただ、同時に、そこにはチームへの危機感も見え隠れする。様々な思いを胸に、若虎にメッセージを放ち続けていく。
(デイリースポーツ・道辻 歩)