阪神・中村GMが狙うオリックスの逸材

 オリックスの宮古島キャンプ終盤、元監督で現阪神GMの中村勝広氏が突然グラウンドを訪れた。

 「他球団視察はここだけ」とし、古巣の選手、関係者と交流を持った。一見、他球団の編成トップと同様の敵情視察にも映るが、オリックスを訪れたのには特別な意味が見え隠れする。

 オリックスでは今季、金子千尋投手、平野佳寿投手、馬原孝浩投手とリーグを代表する投手が国内FA権取得見込み。馬原を除く2人は、中村監督時代のオリックスでキャリアをスタートさせた生え抜き。当然、中村GMの視線も熱を帯びる。

 阪神では昨オフ、久保康友投手がFAでDeNAへ、スタンリッジはソフトバンクへ移籍。ドラフトも含め、将来を見据えた投手陣の再構築は継続的課題だ。

 同じ関西に本拠を構える両球団では、トレードは活発に行われてきた。阪神へのトレードからFAでオリックスに復帰した平野恵一内野手らが成功例でもある。「身近な球団だし、埋もれている選手の環境を変えてあげて、力を発揮できるようにという考えは互いに持っていると思う」と中村GM。

 また、2012年に中村氏が阪神GMに就任後、同氏がオリックスの監督、球団本部長時代に編成担当だった人材が相次いで阪神へ移籍していることも興味深い。

 同年オフ、オリックススカウトグループ部長の経歴がある熊野輝光氏を、巨人からスカウトとして迎えた。昨秋には現役スカウトグループ部長だった古屋英夫氏を2軍チーフ兼打撃コーチに招へい。2人はともに、オリックスが金子、平野をドラフト指名した当時にスカウトをしていた人物だ。

 「FAについては、まだ気が早いんじゃない。ノーコメントにしましょう」と言葉を濁した中村GM。しかし、トレード発言の奥にはFA選手獲得の狙いも見え隠れする。今オフ、3投手がFA権行使に至れば、オリックスとの太いパイプを生かした阪神が獲得競争に名乗り出るのは必至だ。

(デイリースポーツ・中野裕美子)

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