かつての名捕手が描く“捕手道”とは
19日に打ち上げたロッテ・石垣島キャンプ。おなじみとなった光景があった。ドラフト2位・吉田裕太捕手(立正大)への、伊東勤監督(51)の熱血指導だ。ブルペンでは捕球について細かくアドバイス。居残り特打では付きっきりでトスを上げ続けた。そこには、かつて名捕手だった指揮官の、吉田への強い期待が見て取れた。
昨季、12球団で規定打席に達した捕手は、巨人・阿部、楽天・嶋、オリックス・伊藤、西武・炭谷の4人。うち巨人、楽天はリーグ制覇しており、捕手の固定は、Vへの絶対条件のひとつということを証明している。
ロッテの場合も、「ポスト里崎」の育成は急務だ。昨秋、スカウト会議に出席した伊東監督は、資料映像で見た吉田に惚れ込み、獲得を熱望した。低めの球に対するキャッチングの巧さ。「俺に似ている」と、かつての自分に重ね合わせ、指名に至った。現役時代、名捕手として常勝西武の黄金時代を支えた指揮官。描く“捕手道”は「ディフェンス力」に尽きる。
これは、捕手出身の監督の共通項ともいえる。例えば「優勝チームに名捕手あり」を持論とする野村克也氏は、ヤクルトで古田、楽天で嶋を起用し、一流の捕手に育て上げた。結果的に、古田は実戦経験を積む中で打撃も向上し名球会入りを果たしたが、正捕手の座を射止めたのは、あくまでその高いディフェンス力を買われてのものだった。
伊東監督は、今キャンプを打ち上げる際、吉田について「打つことは二の次、三の次」とし、「けがに強そうな体。これはレギュラーを獲る絶対条件」と、改めて指揮官の描く正捕手への道を示した。連日にわたって英才教育を施したルーキーを、今後の実戦で積極起用していく方針。吉田も「何とか結果を残したい」と正妻獲りへ意気込む。
捕手は、育成が最も難しいポジションとも言われる。リード面などゲームを通して身につけねばならないことが圧倒的に多く、一人前の捕手を育て上げるためには、試合で場数を踏むことが何よりも必要になってくる。なおかつ、育てながら、チームの勝利も同時に考え、起用し続けていかねばならない。
各球団ともに、そこが最も頭を悩ませる部分なのだが、元名捕手の伊東監督ならではの、手腕の見せどころだ。大胆起用が、チームに思わぬ活性化をもたらす可能性もある。
今年は巨人のドラフト1位・小林(日本生命)、阪神の同4位・梅野(福岡大)、DeNAの同3位・嶺井(亜大)、西武の同1位・森(大阪桐蔭)ら、新人捕手が話題を集めているが、梅野のように打力への評価が高い“攻撃型捕手”もおり、タイプは様々。それぞれのチーム方針に沿った形で、どれだけ頭角を現すか楽しみだ。
(デイリースポーツ・福岡香奈)