フィギュアにはやはり公正な採点方法を
浅田真央が金メダルを獲得できなかったから、いうわけではない。やはり、フィギュアスケートに万人が納得できる公正な採点方法を取り入れてほしいと思った。
フィギュアスケートの採点は、国際スケート連盟(ISU)が規定しているジャッジシステム「Code of Points」が用いられている。これは、「International Judging System」とも呼ばれ、種目ごとに技術点、構成点、ディダクション(違反行為によるマイナス)を算出し、それを合計したものを総合得点とするが、以前、一般には実に分かりづらい部分があると指摘した。
その疑問はいまだに拭い去れていない。無事に閉幕したロシア・ソチ五輪では地元のアデリナ・ソトニコアが金、メダル、キム・ヨナが銀メダルを獲得した。一方、金メダルを期待された浅田はSPでの失敗が響き、6位に終わった。この女子フュギュアの順位を巡り、キム・ヨナの地元・韓国では採点見直しと判定の調査を求める署名が100万人単位にも達しているという。
2月20日のフリー終了後に採点に不満を持った人物が、オンラインの署名サイトを使って署名活動を始め、韓国人のユーザーを中心に急速に支持を集めたからだ。これまで、浅田の採点の低さに疑問を呈してきた日本のファンにとっては何をいまさら‐という感じもするだろうが、これも分かりづらい採点競技だからこその弊害である。
一番首をかしげるのは、キム・ヨナではなくトリプルアクセルを成功させた浅田のフリーの点の低さである。ソトニコアはフリーで両足着氷のミスあったと思うが、ミスとは判定されておらず149・95点の高得点を挙げた。ノーミスのキム・ヨナは144.19点で、銅メダルのカロリーナ・コストナーの142.61を上回ったものの浅田は142.71点にとどまった。
浅田は試合後、「できるって思ってやって、これが自分がやろうと思っていた構成なのでよかった。今回のフリーは、しっかり自分が4年間やってきたことを、そしてたくさんの方に支えてもらったので、その恩返しもできたのではないかなと思う。五輪という大きな舞台で、自分が目指しているフリーの演技ができた」とコメント。フリーでのパーソナルベストを振り返ったが、ここで、出来栄え点といわれるGOE(Grade of Execution)に注目してほしい。演技審判によって0をベースとし-3から+3の7段階で評価された各要素の出来栄えのことだが、要素ごとにそれぞれ評価の観点(着眼点)が設定されている。
ソトニコアのGOEが14・11点、キム・ヨナは12・20点、コストナーは10・39点だったのに対し、浅田はわずか6・69点。浅田はトリプルアクセルで回転不足を取られず、0・43点の加点をもらったが、続く2連続3回転ジャンプは二つ目が回転不足の判定。3回転ルッツも踏み切り違反と判定された。さらに、その後のダブルアクセル3回転トゥループも回転不足と判定され、ステップシークエンスなどで加点はあったが、GOEはわずか6・69にとどまったのである。
なぜ、浅田のGOEが優勝したソトニコアと7・42点、キム・ヨナとは5・51点、コストナーとも3・70点も離れているのか?さらに、演技構成点の合計もソトニコアは74・41点、キム・ヨナ74・50点、コストナーは73・77点に対し、浅田は69・68点にとどまっている。日本国内のみならず、世界中に感動を生んだ浅田の評価が、これほど低いのか。私は今のところ納得のいく説明を目にはしていない。
ISUは2月21日、ソトニコワが金メダルを獲得した女子の採点でメディアから疑問の声が上がったことに対して「厳正かつ公平な演技の評価に取り組んでいる。ISU採点システムの高い質と整合性に自信を持っている」という声明を発表。さらに、9人のジャッジは13人から抽選で決まり、同じ国から複数は選ばれないこと、極端な採点を防ぐため、最高点と最低点は切り捨てるなどの手順を説明した。
それ以降は動きがなく、今のところ万人が理解できる採点方法への変更はまだ模索されていない。浅田の「ラストダンス」になるかもしれない世界フィギュア選手権が26日から開幕する。だが、金メダリストであるソトニコワ、銀メダルを獲得したキム・ヨナの欠場が決定しており、浅田にとっては本当の意味でのリベンジのチャンスが永久に失われることになるかもしれない。
現状のままでは第2、第3の浅田が生まれるかもしれない。精いっぱい演技する選手たちには罪はない。採点競技であるがゆえの難しさは理解するが、4年後の韓国・平昌での冬季五輪に向けて、ISUには「大きな一歩」を踏み出すことを期待している。
(デイリースポーツ・今野良彦)