阪神元監督が絶賛する絶好調の「補欠」
阪神の監督経験者が、新井貴浩内野手を絶賛している。
評論の仕事で阪神の沖縄・宜野座キャンプを訪れた岡田彰布氏は「新井がすごい良うなってる。今年はあいつ、やるよ」と、自信ありげに予見した。同じく沖縄を訪れた評論家の真弓明信氏も新井のフリー打撃を見ながら、その変貌ぶりに驚いていたという。打線の低調でオープン戦下位に沈む阪神において、3月21日現在、新井はオープン戦打率・360と好調を維持。阪神の前監督と前々監督はひと月前から、新井の「大変身」を見て取っていた。
岡田氏と言えば辛口で有名。歯に衣(きぬ)着せぬ物言いで、現場に対しておべんちゃらを言わないだけに、説得力がある。同氏は沖縄で広島とのオープン戦を観戦した日の夜、新井の「変化」に言及した。
この試合、5番で先発した新井は第2打席で篠田から左前安打を放っているが、岡田氏が褒めたのは第1打席のファウル。即戦力ルーキー大瀬良が投じた初球にちゅうちょなくバットを出した姿を、こんなふうに評していた。
「きょう、あいつ初球のカーブ、振りよったやろ。あれは狙ってなかったボールやと思うけど、それを自然に反応したというのかな。去年まで、初球のあんなカーブ、普通に見逃しとったからな」
翌日、この見解を新井本人にぶつけてみると「まったくその通りです」と返してきた。「初球、カーブを打ってファウルになったんですけど、コースはいいところだった。去年なら、直球待ちで、あのカーブには手が出ていない」のだという。
オープン戦で目を引くのは、昨季ことごとくバットが空を切った外の変化球をヒットゾーンへ運ぶ、あるいは見極めているところ。なぜ弱点を克服できるようになったのか。新井と親しい関係者によれば、広島在籍時代の先輩にあたる、前田智徳氏の指南によるものが大きいのだという。
昨季限りで引退した前田氏が宜野座キャンプを訪問した際、新井と1時間近く打撃談義を交わしていた。新井は「会話の中身?それは言えませんよ」とはぐらかしていたが、どうやら「天才打者」から大きなヒントを得たようだ。
主力がのきなみ低調だったプレシーズンマッチの期間中、覚醒した新井は結果を出し続けてきたわけだが、球団の方針で一塁のレギュラーは新助っ人のマウロ・ゴメス内野手が務める。新井は「長いシーズン、何があるか分からないから、準備だけはしておく」と殊勝に話しているが、夫人の出産で来日が遅れ、右足の痛みで調整もままならなかったドミニカンの力量は未知数だ。元阪神監督が活躍に太鼓判を押す新井の出場機会は果たして…。
(デイリースポーツ・吉田 風)