オリックスで際立つ井川の存在

 オリックスの開幕ローテーション候補・井川慶投手の存在が際立っている。貴重な左腕として、期待を集めているだけでなく、ユニークな言動も注目の的だ。

 オープン戦初登板初先発だった3月7日の巨人戦は、3回9安打5失点。2四死球と、課題を露呈したかにみえた。「変化球が思うようにいかなかった。フォームが悪い。勢いがない」と思い通りにいかないマウンドだったようだ。

 しかし、井川は仰天のポジティブ発言で締めくくった。「日本一の打線に投げられてよかった。3回で70球くらいですか?それだけ球数とイニング数を投げられた。順調です。2014年、やっとスタートラインに立てましたよ」と胸を張って豪語。独特の言い回しの裏には、打ち込まれる中でつかんだ何かを指していた。

 そして同14日のロッテ戦では4回3安打1失点と、見事に立て直したのだ。最速は140キロと全盛期には及ばなかったが、チェンジアップなど変化球を織り交ぜたベテランの技を見せつけた。

 宮古島の1次キャンプでは、第1クールは立ち投げのみ。第2クール初日にようやく捕手を座らせ21球。そこから徐々に球数を増やし、終盤は連日100球ほどを投げ込んだ。

 「毎日ブルペンに入り、少しずつ球数を増やす。昨年は左肘の手術明けであまり投げられなかったが、今年はタイガース時代の調整法に戻しているんです」。

 高知での2次キャンプ中には、室内練習でフリー打撃に志願登板こともあった。傾斜のない地面での投球だったが「平地で投げるのは米国では多い。体重移動が難しいし、勉強になる」と前向きに捉えた。ケガもなく、計画通りに準備ができたことで、表情に自信に満ちていた。

 12年10月に左肘の遊離軟骨と骨棘(こっきょく)の除去手術を受け、昨年の春季キャンプは2軍で調整。日本球界復帰3年目だが、1軍の春季キャンプ参加は阪神時代の2006年以来となる。当時、5年連続10勝以上を挙げていた左腕は34歳になった。オリックスでは過去2年間で5勝と足踏みしたが、独自の調整法で復活への手応えをつかんでいる。

 22日は3試合目の登板。「阪神時代も、オープン戦は5イニング程度を3試合くらいしか投げていない。大丈夫ですよ」と余裕さえみせる。今季、背番号「29」から目が離せなくなりそうだ。(デイリースポーツ・中野裕美子)

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