阪神・能見 負けられない訳の社会貢献
開幕を一週間後に控えた21日、ずっと温められていた能見の思いが、一つの形となって発表された。プロ野球選手として、今季、子供たちに向けた社会貢献活動に取り組むことが明かされた。
「何がいいかなと考えていて。去年も(考えが)あったので。球団と話しながらです」
活動は、シーズンの自身の成績にリンクさせたものになる。阪神の本拠地の甲子園がある西宮市と、能見の出身地の豊岡市の児童福祉施設や保育園などに、勝利数に応じて野球にまつわるオリジナルの玩具がプレゼントされる。
玩具の具体的な内容は、阪神タイガースによるオリジナルの野球盤(甲子園球場、タイガース仕様)やぬいぐるみ(ハローキティー、テディベアのタイガース仕様)といったもの。1勝につき、野球盤10台、ぬいぐるみ10体が寄贈されることになり、シーズンオフに主な施設(1カ所)に能見本人から直接手渡される予定だ。
オフになれば、各球団の選手の福祉施設などの訪問がよく報道される。能見もその一人で、そういった中で今回の活動が生まれた。4年ほど前、能見が福祉施設を訪問した時に「何かやりたいというのはある。でもどういう形がいいのかなと思っていて、いろいろ考えたい」と話していたことをはっきり覚えている。
こういった社会貢献活動は、多くのプロ野球選手がそれぞれの形で取り組んでいる。同じ阪神では、岩田が1勝につき1型糖尿病研究基金に10万円の寄付。また、元阪神の赤星氏は自身の盗塁数に応じて全国の施設に車いすを寄付していた。
他球団では、巨人・内海が奪三振数や投球回数に応じてランドセルの寄付を。また、現在、カブスとマイナー契約を交わしている元ソフトバンク・和田は、投球数に応じて途上国の子供たちにワクチンを贈ることにしていた。もちろん、他の野球選手や野球界に限らず多くのアスリートが行っていることだ。
グラウンドでのプレーはもちろん、ユニホームを脱いだところでも、一人の人間として夢を与えることの意義。実際にプロ野球選手らと触れ合えることで子供たちが勇気をもらえるだけでなく、こういった取り組みが公になれば、例えば難病と言われる病気のことなどがより世間に認知される意味合いもある。
能見は「いい意味で自分にプラスにして、なるべく多くできるように。ノルマは課さない。できるだけ(多く)やね」と話す。大げさに言うなら、負けられない理由が増えた今季。すでに球界を代表する投手ではあるが、もう一回り大きくなるような一年になるのではと思う。(デイリースポーツ・道辻 歩)