藤井と鶴岡 甲子園が野球人生をつなぐ

 春の訪れを告げるかのように、高校球児の熱戦が繰り広げられている。毎年この時期になると、記者1年目を思い出す。もう19年前、95年のセンバツが、初めての取材経験だった。

 1月17日に阪神淡路大震災が起こり、開催そのものが危ぶまれた大会。観音寺中央高の初優勝で幕を閉じたが、一番印象に残ったのが準々決勝の神港学園‐今治西の一戦だった。延長13回の激闘の末、今治西が準決勝にコマを進めた。

 当時、神港学園の主将はDeNAから阪神に移籍した鶴岡一成捕手。今治西の主将はDeNAの藤井秀悟投手だった。被災地の期待を背負った鶴岡の春は幕を閉じた。勝った藤井も、九回に第1球を投げた際に左肘内側側副靭(じん)帯損傷の重傷を負った。左腕をつりながら、一塁手として出場を続けた。九回裏には同点適時打を放った。熱い戦いを、今でも鮮明に覚えている。

 10年の藤井の巨人移籍で、同級生の2人はチームメートとなったがバッテリーを組む機会はなかった。12年にそろってDeNAに移籍。昨年7月13日の阪神戦(甲子園)では、藤井にとっての11年ぶりの完封勝利。マスクをかぶったのが鶴岡だった。

 「九回の初球、ビビりました。あのときも初球にやったので」。大役を果たして、藤井は言った。甲子園での九回のマウンドは、95年センバツ準々決勝以来。高校時代の苦い思い出が、同じ状況でよみがえってきた。故障した夏の続きを演じていたのだろうか。当時は敵だった鶴岡のミットをめがけて、最後まで投げきった。

 「夏の甲子園はあまり知らない。経験したいと思います」。センバツ時の故障で、夏の甲子園は出場できなかった藤井。同26日も甲子園で鶴岡とバッテリーを組み、夏の甲子園で甲子園2試合連続完投勝利を飾ったのだった。

 「トレードも経験しましたし、FAで戻って、今度は人的補償で阪神さんにお世話になる。おもしろい野球人生だと思います」。そう話したのはFAの人的補償として阪神に移籍した鶴岡だった。「甲子園は好きな球場。あれだけの声援を受けて試合に出られる。すごくいいことだと思う」と地元で迎える、新たな野球人生への思いを口にした。

 DeNA・藤井、阪神・鶴岡。交錯する、2人の野球人生。2014年、あの時のセンバツ以来、今度は甲子園で敵として戦う2人。どんなドラマが見られるか、同級生対決を、ひそかに楽しみにしている。

(デイリースポーツ・鈴木創太)

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