マエケンVS川上…思い募る鯉竜開幕戦
カープファンは、嫌な記憶がよみがえったかもしれない。
中日・谷繁元信監督が3月24日、都内で「セ・リーグファンミーティング」に、リーグ6球団の監督と一緒に参加。その壇上で、28日・広島との開幕戦(ナゴヤドーム)に、川上憲伸投手を先発させると発表した。
川上は米大リーグから日本球界に復帰した12年は3勝、13年は1勝に終わった。13年オフには戦力外通告を受けながら再契約。日本通算116勝の実績は立派だが、エースが務めるべき開幕投手に、川上が入るのは驚きだった。当初は大野雄大投手が本命視されていた。
広島の野村謙二郎監督は「大野が来ると思っていた。だが川上もあり得ると思っていた。どっちかが来ると思っていた。以前に川崎が来たりしていたし、誰が来てもいいように準備していた」と、述べた。
04年に落合博満新監督(現中日GM)が、過去3年間1軍登板のなかった川崎憲次郎投手(現ロッテ投手コーチ)を開幕投手に抜てきした。野村監督が言うように、「先発川上」は「先発川崎」と重なるサプライズだった。
その04年4月2日、ナゴヤドームで行われた中日‐広島戦。広島は川崎から5点を奪い、二回途中で引きずり下ろした。ところが、先発のエース黒田博樹投手(現米大リーグ・ヤンキース)が崩れ、最終的には5点差を逆転され、6対8で敗れた。
04年のリーグ優勝は中日。広島は5位に沈んだ。川崎は3試合に先発し0勝、潔く引退した。黒田は2桁勝利が3年連続で途切れ、7勝9敗に終わった。この開幕戦は“落合マジック”の象徴的場面として、今も語りぐさになっている。
28日の14年シーズン開幕戦。川上に対する広島の先発は、絶対エース前田健太投手。野村監督は「マエケンで落とす訳にはいかない」と、必勝を誓った。
04年開幕戦、28日の14年開幕戦、ともに先発出場が予想される広島選手は石原慶幸捕手のみだが「その時と違って、今は予告先発ですから。誰が投げるか分かっているんだから、04年とは全然違いますよ」と話した。
ちなみに、石原は当時、「先発・川崎」がアナウンスされた時の心境を「しょうがない」と、黒田の乱調の原因にも「(川崎先発は)関係なかった」と振り返った。
「川崎先発」が有名なのは、やはり中日が勝ったからこそ。今回でもし、昨年の実績通りに前田が好投し、川上が打ち込まれて広島が勝てば、人々の記憶には残っていかないだろう。
開幕戦はたかが144試合の中の1試合にすぎない、とみる向きもある。一方で、開幕戦はシーズンを占うとする意見があるのも事実。個人的には04年とは異なって、前田と川上による投手戦になれば面白いと思っている。(デイリースポーツ・山本鋼平)