「4番サード中田」ミスター後継なるか

 「4番・サード」。花形のポジションであり、打順であり、その代表的存在が、ミスタープロ野球、長嶋茂雄氏であるようにスターが務めるにふさわしい響きのオーダーだ。

 今季4番・サードに挑戦している選手がいる。日本ハム・中田翔だ。球団からチームを背負うスターとしての命を受け、左翼からのコンバート指令が下った。栗山監督も4番・サード長嶋を引き継げる逸材として中田に託した。

 だが、外野から内野へのコンバートは、周囲が言うほど一筋縄にはいかないようだ。中田自身もキャンプ中に「今まででやったことのない動きが多い」と話し、悩んでいた様子だった。内野守備の上達は決して容易なことではないようだ。

 過去の例からも、内野手から外野手へ転向し、ゴールデングラブ賞を受賞した選手は多くいる。日本ハムでも陽岱鋼、ソフトバンク・秋山監督、高校時代内野を守っていたヤンキース・イチロー、松井秀喜氏など名だたる選手が多くいるが、その逆の外野から内野に転向し、ゴールデングラブ賞を受賞した例は元・巨人で現DeNA・高田GMと日本ハム・稲葉篤紀の2人しかいない。

 期待に応えようと、キャンプから三塁の守備練習に明け暮れていた。外野の練習は皆無だったのは三塁で一旗揚げると決意した現れだったのかもしれない。紅白戦、練習試合を含め4番・サードで試合で出続けた。しかし、慣れないポジションに悪戦苦闘。プロ1年目に少し守ったことがあるとはいえ、高校時代も投手と外野手で三塁は経験の少ないポジションでもある。特守は数多くこなしているものの、1、2カ月ではうまくいかない。試合では失策も多かった。

 「どんどん失敗して、経験してうまくなるようにしたい」と、開幕サードを目指し、前向きに話していたが、精神的負担は大きかったようだ。首脳陣は一時的に三塁コンバートを凍結。最後のオープン戦4試合は左翼でスタメン出場した。守備の重圧から解放された主砲は本来の打撃を取り戻し、安打、本塁打を量産したのだから、負担があったのは否めない。

 開幕は4番・レフトで決まった。だが、首脳陣も野球人生の幅を広げるため、今後も挑戦する機会をうかがうという。とある首脳陣は「諦めたわけではない。彼の将来を考えても」という。球団内でも「スター性のある選手は守るところは遠いところより、ベンチに近い方がいいのでは」という見向きもある。

 キャンプ中の練習試合、「4番・サード中田」のコールに球場内がドッと沸いたのを覚えている。難しい挑戦ではあるが、今後、左翼とサードを併用して守り、徐々に上達していけば、「4番・サード中田」が近い将来、定着するかもしれない。

(デイリースポーツ・水足丈夫)

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