柄本明が自らの演出で親子共演
俳優・柄本明(65)が4月10日から同20日まで東京・下北沢の本多劇場で行われる劇団東京乾電池の本公演「そして誰もいなくなった~ゴドーを待つ10人のインディアン~」で演出と主演を務める。日本の不条理演劇を代表する別役実氏の作品だ。1976年の劇団旗揚げメンバーである綾田俊樹ら役者陣に、次男・柄本時生との親子共演など、見どころの多い舞台である。
柄本明は3日、劇団を通してデイリースポーツにコメントを寄せた。まずは内容を次のように紹介いただいた。「『そして誰もいなくなった』はアガサ・クリスティの同名小説を基にした劇作で、クリスティの原作は映画化もされてます。謎の人物から招待状を受けとった客が動機も目的もわからないまま次々と殺されていく。まぁ、ふざけた話ですよね」。“ふざけた話”に隠された魅力とは?
「出てきた人が皆、なんだか迷子になっていって、1人、また、1人とバッタン、バッタン死んでいく。だけど、非惨じゃなくて笑える。非常に面白いです。別役さんの言葉の世界はわかりにくいかもしれないけど、ベタベタ感がなくてとても爽やか。好きですねぇー」。なるほど‐。
さらに「モンティ・パイソン風ドンデン返し付き」という、うたい文句も気になるところだ。本作は2011年8月に下北沢の駅前劇場で3日間だけ上演され、再演希望が高かった作品という。緻密にして大胆な演出、エンターテインメントな作風で好評を博した。また、DNAを受け継ぐ息子・時生との共演が実現したという点では、互いにプロとして“板の上”でどう向き合うかにも注目だ。
下北沢といえば“演劇の街”。柄本にとって公私に渡る拠点である。この街を歩くと、日常風景に溶け込んだプライベートな柄本の姿を、かなりの頻度でお見かけしたものだ。フォークシンガーの故・高田渡さんを盟友の柄本がサポートした伝説のライブも、この街での出来事だった。
街自体が劇場といえる下北沢での観劇は、もう一つの魅力でもある。(デイリースポーツ・北村泰介)