今年は何か違う広島の野村監督
中日を撃破し、5年ぶりの開幕2連勝と、鮮やかなスタートを切った今年の広島。シーズン前の評論家の順位予想でも、指定席だったBクラスではなく、2位、3位と上位に挙がるなど、いつもと違う雰囲気の中、シーズンを迎えた。
春季キャンプ、オープン戦と、確かにチームは昨年までとは違う感じがする。初のCS出場を果たした自信が、そうさせていると思われるが、現場にいて、最もいい意味で“違う”と感じさせるのが、野村監督だ。
今年で就任5年目。悲願のAクラス入りを果たした昨季終了後、辞任を申し入れたが、松田オーナーの説得で続投を決めた。そして臨んだ今年、春季キャンプの時から、こんなことを言っては失礼だが、異常に肩の力が抜けているというか、リラックスしていた。
1軍では若手にチャンスを与えながら、2軍も見渡し、マイペース調整のベテラン勢の状態を把握。この時から開幕戦ではなく、1年間戦う上での戦力を把握し、起用法を頭に描いているようだった。
そしてオープン戦では、各選手に1軍へのチャンスを与えた。昨年の春季キャンプから「結果を出した人間、力をつけた人間を使う」と言ってきたが、今季は一層シビアになっていた。それが顕著に現れたのが、オープン戦最終戦となった3月23日のソフトバンク戦。開幕前、最後の仕上げとなるこの試合で、それまでスタメンで起用していた堂林を外し、ドラフト3位の田中を使った。
堂林と言えば、野村監督のチーム作りにおいては象徴的な存在。2年前に初の1軍で開幕出場させ、どんなに三振しようが、エラーをしようが、我慢してスタメンに起用してきた。それがこの日、2試合連続無安打で調子が下降気味という理由で外した。この采配が、“今年の野村監督は違う”ということを、報道陣だけでなく、チーム内の選手、スタッフにも知らしめた。
開幕戦では堂林をスタメンに起用したが、無安打に終わると、翌日の2戦目には小窪を、3戦目には田中を使った。“堂林を特別扱いしない”ことをまざまざと見せつけた野村監督。もちろん最善の策は何か、頭を悩ませているはずだが、それでも「三塁が誰になるのか楽しみだろ」と競争を楽しんでいるように見えた。
この起用法は、堂林に対して危機感を与えるショック療法かもしれない。ただそれ以上に、今年は本気で優勝を狙っているという意思表示だったのではないか。開幕戦と3戦目に敢行したセーフティースクイズもそうだ。「これからも先に点を取りにいく時にあると思う」と試合後に話したが、周囲に何と言われようが自分がやりたい野球をやるんだという意思の表れだったと思う。
開幕前日の練習中には報道陣に近寄り、「石川遼クンが使っている新しいドライバー、飛ぶらしいね。まあ買っても、今はゴルフをできないけどな」と談笑していた。野村監督の就任2年目から担当となり、以来間近で見続けてきたが、シーズン直前にもかかわらず、ここまでリラックスしている姿は初めて見た。
開幕から1週間が経ったが、前述したように、いまだに肩に力は入っていない。今年は優勝しかない。できなかったら辞めればいい。そう思わせる野村監督の余裕に、今季の戦いぶりを期待してしまう。
(デイリースポーツ・菅藤 学)
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