大卒新人投手活躍の背景にあるものとは

 プロ野球開幕から1カ月近くがたった。各球団の戦力が、判明し始めるこの時期。プロの世界に飛び込んで間もないルーキーたちの奮闘ぶりが目を引く。

 最高のスタートを切ったのが、広島の大卒右腕1、2位コンビだろう。ともに開幕ローテ入りし、4月25日現在、大瀬良大地投手(九州共立大)は2勝、九里亜蓮投手(亜大)は雨で1度登板予定が流れたにもかかわらず、先発で2勝している。苑田聡彦スカウト統括部長も「こんな年は珍しい。こんなに早くやってくれるとはね」と目尻を下げた。

 また、阪神6位の岩崎優投手(国士舘大)は、2軍スタートから快投続きで評価を上げて、開幕直後は崩壊状態だった先発陣の救世主に。初勝利以降もローテで好投を続けている。

 最近、大卒新人投手の活躍が目立つ。昨年はヤクルト・小川(創価大出)が16勝で最多勝、楽天・則本(三重中京大出)も15勝を挙げた。「大卒は即戦力」と言ってしまえばそれまでだが、ともに2位指名にも関わらず、新人の枠にとどまらないリーグ屈指の成績。プロ入り前の期待値を1年目から大幅に上回る選手は多くなっている。

 たとえば一昨年のパ新人王、ロッテ・益田(関西国際大出)は、4位指名から新人最多記録を更新する72試合登板で41ホールド、防御率1・67という数字をたたきだした。

 プロで即通用する大学生が増えた要因には、指導環境の変化による技術レベルの向上を指摘する声があった。あるセ・リーグ球団のスカウトは「元プロが教えられるようになって、全体として、ずいぶんコントロールがよくなった」と話す。昨年から元プロの学生野球資格回復が話題になったが、大学に限れば、プロを退団後2年経過すれば特別コーチに就任できる規定が05年から導入されていた。

 学生野球とは違ったレベルでの制球力、球の出し入れや配球についての手ほどきを、早い段階から受けられる土壌が作られていった。そうした“プロ野球の考え方”に基づいた、技術指導による影響は大きいはず、と印象を語る。

 大卒1年目から成功している投手には共通項がある。前述のスカウトは「低めにボールを集められるようになっている。そういう技術を身につけている投手が多い。小川も九里もそうでしょ」とポイントを挙げた。さらに「そこに落ちるボールがある」と加えた。

 今年の新人については「岩崎はビックリだけどね」と話しつつ「やっぱり、コントロールがいい」と続けた。プロは140キロ台後半を計測する投手がゴロゴロいる世界。だからこそ、生き残るためには『低めへの制球力』が、絶対条件となるわけだ。

 今秋ドラフトは、大学生投手が豊作と言われている。早大の156キロ右腕・有原航平投手、明大・山崎福也投手、法大・石田健大投手の両左腕、亜大・山崎康晃投手ら1位候補がズラリと並ぶ。彼らがプロに入った時に、どんな投球を見せて、どんな活躍をするのか。また、高くなかった前評判を覆し、あっと驚くパフォーマンスを発揮する快腕が出てくるのか。使い古された当たり前の言葉かもしれないが、今年はあらためて『低めへの制球力』の重要性を念頭に置いて、投手のドラフト戦線を見ていきたい。

(デイリースポーツ・藤田昌央)

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