なぜ阪神藤浪は試合終盤につかまるのか
プロ入り2年目のシーズンを迎えた阪神・藤浪晋太郎投手。ルーキーイヤーは規定投球回にはわずかに届かなかったが、10勝(6敗)をマークした。今季は能見、メッセンジャーと先発3本柱を形成し、主に火曜日、カード初戦の先発を任されている。
ここまでは6試合の登板で2勝2敗、防御率4・19という成績。6試合を振り返ると、球数が100球に達する試合終盤につかまるケースが多い。キャンプの投げ込み不足や、走り込み不足などスタミナ面を不安視する声もあるが、中西投手コーチはこれをきっぱりと否定する。
「いきなり100球投げたり、ランニングの量を増やしたら、故障につながる。球数の問題ではない。肩のスタミナはある方だ」
昨季、4勝を挙げて月間MVPを獲得した8月は4試合連続で100球以上を投げだ。中でも8月11日・中日戦(ナゴヤドーム)では9回132球を投げるなど、スタミナ面に不安は感じさせなかった。中西コーチが指摘したのはスタミナ面よりも技術面だ。
「序盤は真っすぐで押して、3、4巡目のバッターの目が慣れてきたときに、変化球でカウントを取るようなテクニックを持っていない。それは本人にも言っている」
昨季は五~六回で代わっていたため、3、4巡目の打者と対戦する機会は少なかった。3、4巡目の対戦で抑えるには、軸になる球や配球を変え、狙ったコースにきっちり投げきる力が求められる。藤浪も「100球どうこうじゃなく、打者は何巡目かしたら慣れてくる。自分はそこを抑える技術がない。工夫していきたい」と冷静に話す。
昨季までのようにリードした展開で六回まで投げ、リリーフにつなぐと白星はついてくる。「勝たそうと思ったら勝たすことはできる。去年の3つ4つは勝たせてやっていた」と中西コーチ。「でもエースになってもらわないといけないピッチャー。意識過剰になっている部分はあるけどもっと意識していい。自分で乗り越えないといけない」と続ける。
中西コーチが思い描くのは「緩やかな右肩上がり」の成長曲線。藤浪の将来を見据え、「高い授業料を払っても投げさせる」と今後も試合終盤まで投げさせる考えだ。この壁を乗り越えたとき、藤浪は次代のエースにまた一歩近づくはずだ。
(デイリースポーツ・杉原史恭)