勝みなみが15歳でツアー優勝できた背景
最近、女子ゴルフツアーでアマチュアの活躍が大いに話題になっている。きっかけは15歳の鹿児島高1年生・勝みなみの出現だ。4月のKTT杯バンテリン・レディース(熊本空港CC)で、当時15歳293日の日本女子ツアー史上最年少優勝を達成。宮里藍の18歳101日を大幅に更新したことでも話題になった。
女子ゴルフ界で注目を浴びるアマチュアは勝だけにはとどまらない。5月のサイバーエージェントレディースで単独2位に入った実力者・森田遥(17)=香川・高松中央高3年、同4位タイの堀琴音(18)=兵庫県ゴルフ連盟、同6位の永井花奈(16)=東京・日出高2年=らが、プロと堂々と渡り合い、次々と好成績を挙げている。
私が以前ゴルフ担当だった当時は、ちょうど宮里藍、横峯さくら、諸見里しのぶ、宮里美香らが出てきたころで、アマチュア花盛りではあったが、本気で優勝を狙うという感じではなかった。その中で宮里藍が2003年のミヤギテレビ杯で優勝したことは、かなり特別なことであったように思う。
ところが、久しぶりにゴルフの取材現場に顏を出した現在は状況が違っていた。アマチュア選手がごく当たり前に上位進出、あわよくば優勝を見据えている。以前は予選を突破すれば喜べたが、今は予選突破くらいは当たり前といったムードだ。
では、アマチュアが当たり前のように予選を突破し、しばしば優勝争いに顏を出し、勝のように実際に優勝してしまう現在の状況はどのようして作られたのだろうか。
その理由のひとつとして注目すべきものがある。それは01年の日本女子プロゴルフ協会(LPGA)によるアマチュア推薦出場回数の上限に関する規則改定で、00年まで4回が上限だったのを無制限とした。
この規則改定後、アマチュア選手のツアー出場回数は目に見えて増える。年度別のツアーのべ出場回数は、01年の改定前の98年85回、99年88回、00年88回。改定後は01年91回、02年64回、03年78回、04年97回、05年114回、06年138回、07年147回、08年119回、09年110回、10年134回、11年108回、12年134回、そして昨年13年は150回に達した。
今、最も注目を浴びる勝の場合はどうか。12年のTポイントレディース(予選落ち)から参戦し、12年は5試合、13年は6試合出場し、今年初戦、ツアー自身通算12試合目のバンテリンで快挙を成し遂げた。もう一人、実力No.1の森田の場合は、09年大王製紙エリエール(53位)でツアー初舞台を踏み、09年はこの1試合だけだったが、10年2試合、11年2試合、12年4試合、13年5試合と経験し、今年は3月のヨコハマタイヤで3位タイ、5月のサイバーエージェントで単独2位に入った。
生半可なプロよりも十分な試合経験を積んで、それを結果につなげたといえる。
ちなみに宮里藍は規則改定前の00年は4試合だったが、改定後の01年は倍の8試合、02年5試合、03年7試合目のミヤギテレビ杯で優勝を果たしている。宮里はいわば、この規則改定の恩恵を受けた第1号選手といえるかもしれない。
この規則改定を主導した当時の樋口久子LPGA会長(現相談役)はこう振り返る。
「アマチュアの有望選手というのは、将来私たちプロの仲間になる選手ですから、アマチュア時代により多くプロの舞台に立って経験の場数を踏んでほしいと思ったんです。そうすることで結果的にプロ全体のレベルが上がって、見に来てくれるお客さんに楽しんでいただけるわけですから」
アマチュアのツアー推薦出場回数は無制限‐。
この規則改定で出場機会を失ったプロからは批判の声もあっただろう。だが、目先の批判には目をつぶり、将来のツアー発展・隆盛を見据えた樋口氏と同氏を支えたLPGAの英断が、アマチュア選手の躍進を促した。そしてそれは勝のツアー優勝というたわわな実を結び、今後女子ツアー開催に名乗りを上げようとしているスポンサーサイドからも大きな注目を浴びるに違いない
(デイリースポーツ・松本一之)