快進撃のオリックス西が手に入れた変化
投げれば勝つ。オリックス・西勇輝投手の快進撃が止まらない。5月13日の楽天戦で8回無失点。今季開幕から7戦7勝で、75年ぶりに球団記録に並んだ。防御率もリーグトップの0・82で、投手部門2冠だ。
入団3年目の2011年に先発投手として台頭。いきなり10勝7敗と2桁勝利した。しかし翌年以降は12年8勝3敗、13年9勝8敗と1桁に終わっている。12年10月のソフトバンク戦でノーヒットノーランを達成したが、全体的な成績は“あと一息”の状態が続いていた。
23歳の右腕が手に入れた変化とは何か。今年の変身ぶりについて、首脳陣が総じて話すのは「精神的な成長」だ。
6勝目を挙げた5月6日・ロッテ戦では、初回に味方のまずい守備からランニング本塁打を許し、二回にも3安打で1失点。しかし三回から見事に立て直した。森脇監督は「去年までの西が顔を出すかと思っていたが、よく成長してくれた」と振り返っている。
別府ブルペン担当は「今までは、緊張感を続けて投げられる時もあれば、ふと気を抜く時もあった。今年はそれがなく安定している」と集中力の高さを指摘する。
「書店に行くたび、何冊もまとめ買いしてしまう」というほど読書好きの西は、今年もキャンプ宿舎に私物として本をどっさり持ち込んだ。自己啓発関連からビジネス書など、ジャンルを問わず読むことで、知識や感情が豊かになったのだろう。
さらに「ピンチを迎えると焦って、投げるテンポが速くなる」という欠点を克服。ピッチングの際にマウンドで独り言をゆっくりとつぶやき、間を取るようにしている。「心の余裕があると全然違う」と、大きな効果をもたらしている。
何をつぶやくのか。難しい言葉でも決まった内容でもない。「配球など、どうってことのない言葉ばかりです」。ほかに「チームのために」「大丈夫」など普段考えたり、口にしたりすることがほとんどだという。
もちろん制球力やキレなど技術面での上積みもあるが、それを出し切るのはしっかりとした精神力。西が実践している方法なら、子供たちの野球にも取り入れることができそうだ。
(デイリースポーツ・中野裕美子)
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