日本ハム 二刀流は大谷だけじゃない

 日本ハムの試合前練習の一コマ。「あれっ、飯山が外野の練習をしている?」。「近藤が三塁の早出特守をしている」。「なんで西川が外野にいるんだ」。報道陣がざわめく。飯山は遊撃、三塁で堅実な守備に定評があるベテランだが、今季外野を守った。近藤は開幕直後に先発マスクをかぶったが今や三塁を守る。西川も、もともとは二塁手。本業のポジション以外もこなす。内野が外野を、外野が内野を、捕手が内野を守る“守備二刀流”で出場する選手が多いことが目につく。

 それでも、それぞれの選手が、まずまず無難にこなしているが、日本ハムのコンバートは決して場当たり的ではない。「もともと近藤は捕手も内野もできるという適性もあった。できない選手にはやらさない」と球団関係者は言う。5月2日以降、スタメン出場の場合、三塁を守っている近藤。球団は横浜高時代に捕手としての能力もさることながら、内野手としての能力もかっていたという。栗山監督も三塁を守らせるにあたり監督室に呼び「もう(捕手に)戻れると思うな。それくらいの気持ちでやれ」と本人に伝えた。三塁手としても本腰を入れて守れるようにするため、ハッパをかけた。現に三塁で18試合に出場し、失策数は2(27日現在)。守備で健闘していると言えるだろう。

 “守備二刀流”が今季、有事の場合に効力を発揮した。4月上旬に、稲葉が左膝の手術により離脱した。5月上旬には小谷野が右膝じん帯断裂で戦列を離れた。正、一、三塁手がいなくなった不測の事態に、一塁には時には中田が守ることもあった。三塁には近藤である。小谷野のケガによる離脱後、近藤が三塁をこなす素質があると見て、三塁を守らせ、現に務めあげているのだから、チームとしては助かっているわけだ。

 栗山監督は「シーズンに入れば、キャンプのころから計算していることと違うことが起こる。いろんな状況を考えたときに、前に進めるようにしないと」と言う。

 投手兼野手の大谷もしかり。投手と指名打者が主ながらも、外野を守らせることもある。例えば野手で出場させる場合、ミランダ、アブレイユが指名打者で出場したとして、代打にとどめることはもったいない。時には右翼の守備に就き、スタメン出場させ、ベンチ入りメンバーを有効活用させることができる。

 チーム構想からしても、どこでも守れるようになれば、選手を動かしやすい。ひとつのポジションを守るだけでは務まらない。チームが困ったときにどこでも守れるユーティリティーな選手が日本ハムでは試合に出場するための最短距離なのだ。

(デイリースポーツ・水足丈夫)

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