セ新記録に王手をかけた能見の新境地
目の前の打者を抑えることに集中してきた投球が積み重なり、セ・リーグ新記録に王手をかけた。阪神・能見篤史投手が6日のオリックス戦(甲子園)で10三振を奪い、4試合連続2桁奪三振を達成。この記録の中には、左腕の確かな進化があった。
能見にとっては、記録のために三振を奪うという感覚はもちろんない。今回の記録にはいくつかの要因が絡んでいるが、「量産態勢」とも言えるこの4試合連続の内、最初の5月16日のDeNA戦を除けば、3試合は交流戦に入ってからのものとなっている。
今季の交流戦初登板となった5月24日のソフトバンク戦では、自己最多タイの13奪三振。球審の微妙な判定や自身の状態も含めて「三振でしかアウトを取れなかった」と振り返ったが、次に10奪三振を記録した5月31日の日本ハム戦は「こっち(自分)主導で投げられたので」と話す。
昨年までも交流戦は経験しているが、改めてパ・リーグの打者の印象については「思いきってと言うか、迷いなく振ってくる」と感じている。そこで重要となるのは自身の投球はもちろん、相手打者との駆け引き。その中で、能見には見えているものがあるという。
「バッターによってはスイングを見れば狙ってるもの(球)が分かる。どのバッターもじゃないですけど」
すべての打者に対してではないが、スイングなどの雰囲気から狙い球を感じとる。それを配球に生かしてアウトカウントを稼いでいくのが、能見のスタイルだ。
この2桁奪三振を記録している4試合の成績を見ると、DeNA戦は負けはしたものの8回4失点、勝利したソフトバンク戦は6回3失点、日本ハム戦は8回1失点、オリックス戦は7回1/3を2失点。「狙い球が分かる」中での投球は、すべて奪三振数に比例しているわけではないが、ゲームを作り、安定した結果につながっていると言っていい。
セ・リーグタイ記録の4試合連続2桁奪三振を達成しているのは、過去3人だけ。71年の江夏(元阪神)、94年の紀藤(元広島)、95年のブロス(元ヤクルト)といった名が並んでいる。
能見は常に、個人記録よりも「チームの勝利」と話す。勝利を目指した結果、積み重なる奪三振の数。新境地に足を踏み入れている能見であれば、新記録となる5試合連続奪三振の偉業を達成しても、何ら不思議なことではない。
(デイリースポーツ・道辻 歩)