鳥谷が2軍落ち?そのワケとは…

 甲子園球場の周辺を歩いていたら、ファンの会話が耳に入ってきた。「鳥谷、2軍落ちちゃうか」。7月3日、朝のことだ。球団関係者の取材で10時過ぎに球場に到着すると、数人の虎党が通用口付近に集っていた。「ケガかな。なんぼなんでも来るの、早すぎるやろ」。なるほど、理解できた。

 この日、鳴尾浜球場で予定されていたウエスタンの中日戦が雨天中止となり、ファームが甲子園の室内練習場で練習を行っていた。

1軍の試合(ヤクルト戦)はナイターで夕方6時開始。にもかかわらず、鳥谷があまりも早く球場に現れたものだから、故障で2軍落ちでもしたのか…と勘違いされたのだ。

 甲子園開催のホームゲームの場合、鳥谷は朝から晩まで球場にいる。その日も朝からTシャツ、ハーフパンツ姿でゲームの8時間以上前から体を動かしていた。「球場一番乗り」はもう何年も続いているのだが、初めて目の当たりにした2軍の選手は、一様に驚いていたという。

 7月9日の広島戦で鳥谷の連続試合出場は1400試合に達した。これは衣笠祥雄、金本知憲に次ぐプロ野球歴代3位の記録。これまで上位2人の記録は、誰も寄せ付けない「聖域」のように扱われてきたが、鳥谷がそろそろ視界に捉えようとしている。「準備のたまもの」と首脳陣、あるいは球団内でも大いにたたえられているが、実はこの鳥谷の「姿勢」こそが、阪神の暗黒時代再来を遠ざけているという声がある。

 阪神は05年から8シーズン、リーグ優勝がない。この8年間でAクラスが5度、Bクラスは3度。真弓監督最終年の11年に4位になり、和田監督1年目の12年は5位まで転落した。10シーズンぶりに2年連続Bクラスとなったが、昨季は2位に挽回。1年間代役を要さない鳥谷が「支柱」であることはチーム内の誰もが認めている。

 赤星や矢野、金本、藤川球児ら黄金期を支えたメンバーが次々とチームを去り、阪神は過渡期。西岡、福留らメジャー帰りの大物、呉昇桓、ゴメスら優良助っ人を獲得するなどして補塡(ほてん)してきたが、球団内ではFA権を所有する鳥谷の去就を案ずる論調がシーズン中でさえ絶えない。

 12球団一と評される守備力や、年々進化する打撃への信頼度はもちろんだが「若手の模範」「お手本」の流出を避けなければ「チームの根幹が崩れかねない。鳥谷の代わりはいないから」と、既にオフを見据える球団関係者もいる。

 打率・330、得点圏打率・366はともにリーグ4位。出塁率・429、勝利打点「8」はいずれも同1位(すべて11日現在)。「練習はウソをつかない」を実践していることもあってか、早出練習を見習う選手がどんどん増えてきている。

 鳥谷にはゲームキャプテンという「肩書」があるが、「アピールしても仕方ないんで」と、本人に特段の意識はない。自身の立ち位置を考え、若手に助言できることはする。先頭に立つべきときは立つ。「背中で引っ張る」を地でいくキャプテンがいる限り、虎が坂道を転げ落ちる心配はなさそうだ。

(デイリースポーツ・吉田 風)

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