15年W杯へ進化続けるラグビー日本代表

 ラグビー日本代表は6月21日に秩父宮ラグビー場で行われたイタリア代表とのテストマチに26‐23で勝ち、昨年秋から続くテストマッチの連勝を10に伸ばした。さらに同23日に国際ラグビーボード(IRB)が発表した世界ランクで過去最高の10位に躍進。就任時から世界のトップ10入りをターゲットに掲げてきたエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)は、来年9月にイングランドで開催される第8回ワールドカップでグループリーグを突破してのベスト8入りを新たな目標に設定した。

 昨年6月にウェールズ代表を破る大金星を挙げてから1年、エディー・ジャパンはあらゆる面でスケールアップを図ってきた。特にスクラムの強化には目を見張るものがあり、イタリア戦でもスクラムで互角以上に渡り合ったことが勝利に結びついた。この試合ではラインアウトでイタリアの高さに苦しみ、モールでも押し込まれた。時季的にもボールが滑りやすいという条件下で、両チームとのハンドリングミスで何度も決定機を逃していた。エディーHCは「勝因はスクラムと勇気。それしかない。イタリアは人生を賭けてスクラムを押してくるチーム。そこに勝てたのはいいステップになった」と一定の評価を与える。

 元フランス代表のマルク・ダルマゾ氏をコーチとして招き、徹底してフォワード8人で押すことを追求している。ダルマゾ・コーチ自らがスクラムの上に乗って負荷をかけるハードなトレーニングの印象が強いが、足の位置やヒザの角度など、かなり細部にわたる指示もあるという。イタリア戦のあとフッカーの堀江翔太(パナソニック)は、「ファーストスクラムでいい手応えがあった。チャンスがあればどんどんプレッシャーをかけて行こうと声をかけていた」と振り返る。実際に試合終了間際には、スクラムで相手の反則を誘発してゲームを終わらせるという場面があった。

 エディーHCの掲げるターゲットを目指そうと、選手たちの意識も確実にレベルアップ。過去5戦全敗だったイタリアに勝ったことは快挙と言っていいのだが、FB五郎丸歩(ヤマハ発動機)は「正直なところ、ウェールズに勝った時のようなうれしさはない」とサラリと言ってのけた。フランカーのリーチマイケル主将(東芝)も、「内容には納得がいかない。ワールドカップだったら負けてる試合」と厳しい表情で語った。勝つことはもちろん重要だが、内容を分析して修正する作業も怠らない。しっかり自分たちの足元を見つめて、常に前進する姿勢がチーム全体に浸透していることを感じさせられた。

 日本代表として史上最多の通算キャップ数を後進した36歳のロック大野均(東芝)をはじめ、33歳のロック伊藤鐘史(神戸製鋼)、32歳のナンバー8ホラニ龍コリニアシ(パナソニック)らベテラン勢の安定感は頼もしい。若手でも昨年から代表に定着した福岡堅樹(筑波大)、藤田慶和(早大)に加えて、サモア戦では21歳の松島幸太朗(サントリー)が、本職ではないCTBで起用されながら大活躍。改めてポテンシャルの高さを証明してみせた。どの年代からも人材を登用して、ポジション争いの激しさは増してきている。核となるメンバーはいても、レギュラーポジションを保証されている選手は誰もいない。エディーHCは絶妙のチームマネジメントで、代表選手のモチベーションを高めていくことに余念がないのである。

 これまで日本がワールドカップで勝ったのは、1991年のジンバブエ戦(52‐8)のみ。07年も11年もカナダ戦で引き分けており、どうしても勝利まで届かなかった。所属するプールBでは南アフリカ、スコットランド、サモア、米国と対戦する。この強豪相手にグループリーグで2位以上になりベスト8に進めば、世界中を驚かせることができるはずだ。「私はラグビーを日本で最も人気のあるスポーツにしたい。それには勝つことしかない」とエディーHC。世界の舞台でどんな戦いを見せるのか、来年秋へ期待は高まるばかりだ。(デイリースポーツ・北島稔大)

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