前田健太は「絶好調」を求めない
広島のエース・前田健太投手は「絶好調を求めない」という考え方で、シーズンを過ごしている。「調子が悪くても抑える」と言い換えてもいい。
今季は球宴までの前半戦を、リーグ1位の9勝(4敗)、同1位の防御率2・08で折り返した。PL学園から高卒2年目の2008年に9勝を挙げ飛躍。10年に15勝8敗、防御率2・21で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、沢村賞などのタイトルを総なめして以降、絶対エースとして君臨し続けている。
今季前半戦、勝ち星から遠ざかっていた時期、調子の良しあしについて、こう言った。
「力を抜いて投げて、スピードもキレもあるのが調子がいい時。逆に力一杯投げているのが悪い時。でも、調子のいい、悪いは考えないようにしています。登板の8、9割は“普通”だと考えるようにしています」
大ブレークした2010年頃に、そう考えるに至ったという。「どれだけ練習や、ブルペンで状態が良くても、試合でマウンドに立った時に、自分の本当の調子が分かるものです」と話した。その上で、こう説明した。
「昔は毎回絶好調を追い求めていました。今は違います。調子が良かったら“ラッキー”と思うようにしています。絶好調を求めて、マウンドに立った時に調子が悪いと分かったら、気持ちが落ちてしまうので。考え方を変えてから、ピッチングの波も減ってきました。悪い時の、自分の底のレベルを上げられれば、1年間を通じて成績が安定すると思う」
今季10勝を挙げれば5年連続となる前田。1986~91年に6年連続で達成した川口和久以来の快挙になる。成績に大崩れがないのが、前田の持ち味といえるだろう。
一方、今季のチームは巨人、阪神に次ぐ3位で後半戦に突入した。前田は巨人、阪神を相手に投げ続けるローテが予定されている。「これからが本当の勝負。ここで勝てなかったら意味がない。自分の投げる試合は、絶対に勝たなくてはならない」と、覚悟を示した。
シーズン全体を見渡す広い視野を持ちながら、勝負所では目前の登板を凝視する。下位低迷が続いたカープの暗黒時代を知るからこそ、エースの経験と実績は頼りになる。(デイリースポーツ・山本鋼平)